株式会社ティーケーピー 河野 貴輝

Guest Profile

河野 貴輝(かわの・たかてる)

1972年、大分県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部入社。日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)、イーバンク銀行(現・楽天銀行)の立ち上げプロジェクトに参画し、ITと金融の融合事業を手がける。イーバンク銀行で取締役営業本部長等を歴任した後、2005年8月、株式会社ティーケーピーを創業。11年、TKPガーデンシティ品川(旧ホテルパシフィック東京1F宴会場)の運営を開始。ニューヨーク、上海にも進出を果す。現在、全国1,288室、93,438席(2014年3月現在)を運営する業界のリーディングカンパニーである。

特集成長がさらなる成長を生むITとリアルの融合こそが、真のビジネスである」

1.現場から把握できるニーズにワンストップサービスの提供に重点を置く

 TKPのビジネスモデルにおけるコンセプトは「ITとリアルビジネスの融合」です。自社サイトを入り口に使い、リアルな現場から把握できるニーズに対するワンストップサービスの提供に重点を置いています。
 あらためて、なぜITとリアルの融合が大切なのでしょう。それは、ITの活用はコスト面での優位性があり、集客を図るうえで即効性があると考えられるからです。
 これはITがなかった時代、事業拡大のためにどういうツールを使って集客していたかを考えるとわかりやすいでしょう。その時代、企業が顧客へアプローチするなら、TVCMをはじめとするマスメディアへの出稿が中心でした。逆にユーザー側が何か企業のサービスを調べるとしたら、電話帳が役に立ちましたね。
 もしいまもITのない時代だったら、TKPも想定ユーザーをリストアップして、ダイレクトメールを打ちながら、飛び込み営業をしていたと思います。しかし、これらのコストはものすごく高くつくので、もしかしたら事業としてそもそも成り立っていなかったかもしれません。
 ITは企業が提供するサービスを瞬時に検索し、それを利用したいと考えているユーザーとのマッチングを容易にする、という大きなメリットを提供してくれました。
 一方、マスメディアの場合、マスを対象にサービスを伝えることができる反面、そのサービスに関心がない人にも伝えることとなるので、無駄もあります。近視ではない人に近視矯正の広告は必要がないのと同じで、ITを活用することでそうした無駄を省けるうえに、媒体出稿やDMにかけるコストも少なくすみ、広告宣伝費や営業費などを引き下げることができます。

2.わかりやすい「地図」がリアルの行動とサイト集客を一致させる

 もちろんITの活用にもデメリットはあります。検索した際に上位に表示されなければ、実際のニーズにぴったりのサービスがあったとしても、埋没してしまう可能性が高くなります。大きな効果を期待してサイトをつくったけれど、同業他社の利便性には勝てず、集客につながらないという話はよく聞きます。
 TKPは「貸会議室ネット」(http://www.kashikaigishitsu.net/)を入り口に、自社運営の貸会議室をどんどん増やすといったリアル面の充実を図ることで、サイトを利用する人の利便性をさらに高め、サイトへの集客力を強化し、その結果、利用者がますます増える、という拡大が拡大を生む道筋をつけました。
 また、通常はキーワード広告やSEO対策にコストや手間をかけて自社サイトが検索上位に上がりやすくするという手法をとりますが、TKPが注目したのは、各施設へのアクセスマップです。ここ最近、位置情報をはじめ、地図の役割の重要性をレポートする記事を多く見かけますが、TKPではいち早く、地図の活用こそリアルとITの融合には欠かせないと考えていました。
 TKPの施設を利用してセミナーや会議、イベントを開催するとなると、参加者向けにその会場とアクセス方法の告知が必要になります。いまや、その告知や案内はメールへの地図の添付、URLによる案内が主流です。参加者も携帯電話やPCで情報を確認したうえで、実際に行動をとることが普通になっています。その場合、参加者にとっては、見やすく、利便性の高いものであれば、わざわざ地図検索を利用しないで済みます。そこでTKPの施設への案内図は、他のどの地図よりもわかりやすいものをサイトにアップさせました。そうすると、イベントや会議の主催者は案内にTKPのURLをリンクさせてくれます。リンクされる機会が増えれば、TKPのサイトへのアクセス数が増えます。アクセス数が増えれば、当社サイトの情報を目にする機会も増えるわけで、便利なことがわかれば、次に何かやるときはTKPを利用してみようとなるわけです。
 たとえば、貸し会議室が増えれば、会議の回数が増え、会議の場所を確認する人が増え、(わかりやすいアクセスマップを見るために)それだけTKPのサイトを訪問する人が増え、その結果、TKPのサービスを目にする人が増える。そして利用者が増えていきという好循環を生み出すことができるのです。
 つまり、サイトとリアル両面を充実させることにより、訪問者数アップという相乗効果が生み出され、検索時に上位表示されるようになるのです。現在、TKPのサイトには月間60万人ほどが訪れています。

3.要望に応え続け実現させたワンストップサービス

 前述したように、サイトを入り口にすれば、そのサービスを目的にした人を集客でき、ムダのない営業活動を展開することができます。とはいうものの、顧客の期待に応え、信頼を勝ち取り、リピーターを育成していく努力は欠かせません。TKPは入り口はサイトですが、精鋭の営業部隊が利用者(たとえば施設を利用する企業)のフォローをしっかりとやっています。月間約8000社の利用があるうち、ヘビーユーザーは500社ほどあります。TKPはそのヘビーユーザーの要望に鍛えられ、「もう少し人が入れるところはないのか」というニーズからビジネスセンターを開設し、「ホテル宴会場規模の施設はないのか」とのニーズでカンファレンスセンターを開設、そして「ホテルはないのか」との要望に応えてTKPガーデンシティ品川をオープンさせてきました。
 さらには「交通機関と宿泊の手配もお願いしたい」との声から、旅行業の免許を取得し、イベント等の主催者側として必要になるすべての業務をサポートする「ワンストップサービス」を提供できるようになったのです。
 利便性を高めることでニーズをさらに囲い込み、顧客にとって必要不可欠な存在となれば、ビジネスはさらに拡大していくものです。そして現場での顧客に対するフォローアップがしっかりできれば、その入り口はサイトだけでも十分であり、これこそがITとリアルの融合だと考えています。

TO PAGE TOP