株式会社Branding Engineer 河端 保志

Guest Profile

河端 保志(かわばた・やすゆき)

1989年生まれ。2014年電気通信大学大学院卒業。動員にて人工衛星の姿勢制御の研究を行う傍ら、個人で営業活動やコンサルティング業務を経験。リクルートやDeNAでのインターンを経験した後、13年大学院在学中に株式会社Branding Engineerを創業。エンジニアのための職場選びサービスBranding Engineerを展開中。

特集「Break The Commom Sense」をスローガンに全人材領域をHRTechで革新する

1.2013年設立のベンチャーVCなどから1億円を調達

大化けする予兆が見えるベンチャー企業には出資者が参集するが、Branding Engineerもその1社である。2016年4月に第三者割当増資によってEast Ventures、ベクトルなど5社から1億円を調達した。

同社の設立は13年。年間売上高は14年8月期3500万円、15年同6500万円、16年同3億9000万円と推移し、17年8月期は当初見込みを上回る10億円弱で着地するという。調達した1億円の事業投資でこの勢いに加速をつけ、19年5月のマザース上場、20年8月期の売上高54億円を達成させる計画だ。

事業内容はエンジニア特化型のダイレクトリクルーティングサービス、独立支援サービス、就活サイト一括登録・管理サービス、エンジニア支援メディアなどの運営などステルスでやっている事業もある。事業領域だけを見ると格別革新的な印象を受けないが、「Break The Common Sense」(常識をぶち壊せ)をスローガンに掲げ、「ITによって労働集約の強いHR業界を一変させたい」(河端保志社長)という。

2.学生時代からビジネスでも才覚を発揮

何が既存のHRサービスと異なっているのだろうか。
例えば、既存の求人媒体には採用・不採用にかかわらず一定の掲載料金が発生し、エージェントを利用すれば成功報酬の30%を支払うのが通例だ。一方、同社のダイレクトリクルーティングサービス「TechStars(テクスタ)」(http://techstars.jp/)は、利用・掲載料金を徴収せず、報酬は成功報酬20%のみである(エージェントとして動く時は別)。さらに母集団はエンジニアに限定され、面接対象者のみにアプローチでき、求職者が転職しやすいような細かい施策を行なっている。

就活サイト一括登録・管理サービス「イッカツ」(http://1katsu.jp/)は、学生の登録・管理作業をお幅に簡素化した。イッカツに登録すればさまざまな就活サイトに同時登録され、登録した就活サイトより送られてくるメールやイベント情報などを一元管理できる。メール検索だけでなく就活サイト別にフィルタリングできるため、重要な情報の見落としを防止できる。

HRビジネスのIT化という狙いが的中して、急成長を持続できているのだ。河端は胸の内をこう明かす。
「就職・転職広告の市場規模は約1兆円もある。HR業界は大手企業を含めて労働集約型の事業を続けているので、ITサービスを発展させて、将来は大手企業を追い抜くことも構想している」

河端がそう構想する背景は、単なる勢いではなく、その足跡に現れている。小学生時代からプログラム開発を始め、電気通信大学時代には学業の傍ら、飛び込み営業や個人でできるビジネスで稼ぎを得ていた。

ITとビジネスの両面で才覚を発揮して、ベンチャー企業家になるトレーニングを十二分に積んでいたのだ。

3.「鬼の六則」を周知徹底 自力での成長を促す

同社を設立した13年当時、河端はまだ電気通信大学大学院に在籍していたが、満を持して起業したと言えるのではないか。だが、河端の経営手腕もさることながら、同社の急成長には、社員の力が相当大きく寄与しているという。
「当社はエンジニアをはじめ、社員の質がとんでもなく高く、幹部3人はすぐに社長が務まる。人材を扱う会社だし、将来の高くかも見据えていたので、設立時から採用には一切妥協せず、応募者を厳選してきた」(河端)と自負する業務実績に加えて、思考の深さを見極めている。
現在の採用対象は25歳前後の第二新卒がメインだが、まず自分のキャリア形成をどうしたいのかを尋ね、そのためには何が必要かを答えてもらう。

あるいは特定のテーマについて応募社に意見を求め、河端があえて反対意見を述べる。その意見に応募者が返してくる発言を聞きながら、どのぐらい思考しているかを見極めているのだ。

現在は毎月2~3人を採用しているが、多い時はエントリー数が500人に達するほど競争率は高い。HRビジネスをIT化した革新性が魅力なのだろうが、応募者の特徴に、独立志願者が多いことが挙げられる。
昨年入社した11人の打人が独立志向である。全社員を見ても約30%が独立志向である。トレーニングの場として入社してくる人が多く、当然、スキルアップへの意欲も高い。

こうした人材に対して、目標設定も達成方法も全て自分で考えさせ、上長がサポートをしつつも、あくまで自力で達成させる方法で鍛え上げている。

そのための原理原則が「鬼の六則」と名付けられた行動基準である。①常に当事者意識を持ち、結果を追い求めよ、②仕事を自ら創り出し、周りを巻き込め、③思考を1秒たりとも止めるな、④本気で働き、激しく遊べ、⑤素直に、泥臭く向き合い続けよ、⑥根拠のない自信を絶対的な自信に変えよ、である。

いかにも烈々たる気概がほとばしってくる内容だ。この6つの基準を周知徹底すれば、一騎当千の組織に発展するだろう。上場後には、社員の独立志向と社業の拡大を視野に早速、子会社を5社程度設立し、社員から社長を抜擢していく。18年4月には初めての新卒社員を11人採用の予定だ。

革新と情熱に溢れたBranding Engineerの動向から、今後も目が離せない。

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