株式会社ビジネスITアカデミー 田中 裕明

Guest Profile

田中 裕明(たなか・ひろあき)

1961年福岡県生まれ。81年に国立有明工業高等専門学校を卒業し、外部記憶装置/媒体を扱う専門商社に入社。その後、外資系PCメーカー、マイクロソフト認定資格運営会社を経て、2008年、ビジネスITアカデミーを設立。

特集プログラムはイチからカスタマイズ”業務改善に直結”するIT研修で差別化図る

1.Excel活用が柱 創業以来の基本思想

ビジネスITアカデミーは、企業受けIT研修を主要業務とする会社である。業務の三つの柱は①Webによるスキルチェックとeラーニング、②業務改善研修、③Excel、Accessでの開発受託となっている。特徴的なのは、いずれも、Excel活用を中心に据えていることだ。実際には、①②を組み合わせた研修を行うことが多く、③の開発受託を受けた企業の問題解決のために研修を行うこともある。

企業向けIT研修というと、文書作成、表計算、プレゼンテーション用資料作成など、ソフト操作のスキルアップを目的にしたものが多いが、同社の場合、企業内の具体的な業務改善と課題解決を前提にした「業務改善研修」であり、そのことが大きな差別化につながっている。

「ソフトの操作技術の習得だけでは、研修の価値を見出せない。新入社員研修ならともかく、経験ある社員が対象であれば、業務改善に直結する内容であるべきだ」というのが、同社代表取締役田中裕明の基本スタンスだからだ。この考えは、2008年の創業以来ずっと変わらない。

2.受講企業の不満解消へ 三度の転職を経て起業

田中は同社を起業するまでに三度の転職を経ている。新卒で入社した会社には18年間在籍し、技術職として工場内の生産管理にあたる傍ら、製品の歩留まりデータをもとにその当時の表計算ソフトを使って業務の改善につなげていた。その後、営業サポートとして、売上げデータから販売予測、売上げ分析といった営業支援資料作成の仕組みを作り上げていた。ある程度の役職に就いていたが、社長交代で方針が変わったことをきっかけに、1年越しで先輩に誘われていた外資系PCメーカーに転職した。転職先では、コールセンターでオペレーター200人のマネジメントを担い、ここでもExcelを駆使して、電話応対数の増加、クレーム対応の品質向上などを実現させた。

しかし入社して1年後、その会社が日本を撤退することになり、現場で最後まで残務処理にあたった後、再び転職。新たな職場は、マイクロソフトのExcelやWordの認定資格の運営会社だった。そこで、社長から新規事業を任される。ひとつが全国の資格スクールのサポート事業。もう一つがマイクロソフト認定資格の企業導入を促進するための企業研修だった。

結果的には後者の事業をするうえでの問題意識が、その後の起業へと結びついた。というのも、認定資格の導入を勧めることが主眼の研修は決して先方企業の十分な満足を得るものではなかったのだ。研修を担当するのは当時全国に約1600あったPCスクールから派遣される講師で、既存のテキストに沿った操作スキルの講義に始終していたからだ。「せっかく研修を受講しても、そのせいかが業務に反映されない」。そこが企業側の不満だった。

もっとも、田中に言わせれば「講師のほとんどが、企業での実務経験がなく、業務に直結するような成果は最初から望むべくもなかった」のだが、会社としては「(研修を)もっと売りたい」となるし、一方で採用企業からの満足度をアップさせる効果的な術も見つからなかった。そうした板挟み状態が続くなか、田中はふと思い立つ。
「企業業務に直接、役に立つ研修をやればいいじゃないか」

3.実践ノウハウの強み大手起業が継続利用

そして2008年6月、ビジネスITアカデミーを設立した。
田中は「もともとExcelが好きで、Excelがいかに役立つツールであるか(データを集計し分析しレポーティングしてアクションを起こす)を熟知し、高く評価していた」。これまで経験したどの職場でも、Excelを武器にして業務効率を上げてきた。同社がExcelの実践活用を全面に押し出しているのは、そうした田中自らの実体験があればこそなのだ。同社が研修の依頼を受ける場合の基本的な流れはこうだ。

まず、先方に出向き、面談その他の方法により、その会社あるいは部門の業務の課題がどこにあるのかを洗い出す。企業、部署によって状況は一様ではなく問題点も様々になるが、この手間のかかるプロセスが最も重要と捉えており、そこから業務改善のためにはどんなスキルアップが必要であるかを見極め、IT研修のメニューを組み立てる。

多くの場合、eラーニングによる基本スキルの習得と、基本スキルをもった少人数を対象とした業務改善研修になるが、あらかじめ用意されたテキストやカリキュラムがあるわけではない。「結局イチからカスタマイズすることににある」(田中社長)

コストについても同様で、受講者数×研修単価、という単純なものではなく、内容に見合ったリーズナブルな提案を心がけているという。

現在、年間で300回ほどの研修実績だが、大手金融グループからの依頼を含めリピート率も高く、年々、増加傾向にある。18年の研修予定もほぼ埋まっている状況だ。

「最近はとかく、ビッグデータやAI(人工知能)の活用が叫ばれていますが、資本力のある大手を除けば、まだまだ現実味は薄い。とくに、中小、ベンチャーが通常、業務で対象にする範囲であれば、膨大なデータを相手にする必要はなく、それよりも”読み手(顧客企業)の理解を早める”ためのデータ処理・加工・分析ができれば十分。Excelにはそのための機能が備わっており、その活用ノウハウを身に付けるほうが、業務の改善に直結する」

仕事の本質は「顧客の課題解決に何を提案するべきかに時間を割くこと」である。その本日のパフォーマンスを高めるために、田中は自身のビジネス経験を通して、Excelの活用ノウハウを導き出した。同社が提案するIT研修は、マニュアルでもテキストでも学ぶことのできないビジネスエッセンスのかたまりなのだ。

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