株式会社ブランドコントロール 井原 正隆

Guest Profile

井原 正隆(いはら・まさたか)

1982年生まれ。米国カリフォルニア大(USC)医卒。在学中にモバイルゲーム会社を仲間と起業。大手ゲーム会社に売却後、2006年アクセンチュアでITコンサルティング業務。08年ORM(オンライン・レピュテーション、マネジメント)会社を設立、13年ブランドコントロールを設立し、現職。

特集世界8カ国対応の国際基準で評判リスクをコントロールする

1.ネガティブ情報ほど人は信じやすい

「人の噂も七十五日」の理が通ったのは、ネット情報が一般化する以前までだった。ひとたびネットに書き込まれた情報は、真偽にかかわらず5年も10年もネット上で生き続ける。なかでも誹謗中傷サイトには、落書きにも等し書き込みがあふれ返っている。

一つひとつのサイトは信頼するに当たらずとも、だからといって書かれた側は「所詮はいい加減なネット情報」と看過してよいのだろうか。レピュテーション(評判)リスクのコントロールを日本で早々に手がけたブランドコントロール社長の井原正隆は、こう指摘する。
「人はポジティブ情報よりもネガティブ情報を信じやすい。しかも、同じ情報への単純接触回数が多いほど信用が高まってくるザイオンス効果や、同じ情報に3回接すると認知し、7回接すると信頼して購買につながるというセブンヒッツ理論によって、事実誤認の書き込みでも、アクセスが増えて話題になると信用されてしまう」

それだけではない。検索エンジンで誹謗中傷の次に、同じニュースを扱った報道機関のサイトなどが表示されると、とたんに誹謗中傷サイトの次に、同じニュースを扱った報道機関のサイトなどが表示されると、途端に誹謗中傷サイトの情報に信ぴょう性がましてしまうのだ。同社が提供するのは、誹謗中傷が投稿されるリスクサイト対策、検索ネガティブキーワード削除、2ちゃんねるスレッド削除などで、ネガティブ情報を発見しにくくする「ブランドセキュリティ」とポジティブ情報を発見しやすくする「ブランドリフティング」を強化する。顧客の93%が企業で、7%は政治家、芸能人、弁護士、医師などが占める。設立は2013年だが、井原が共同代表を務める親会社(ブランドコントロール米国会社)は1999年に米国シアトル市に設立され、風評被害対策サービスを提供する。同社創業者のスコット・ウォンはハーバード大学医学部を卒業して医師として8年間活動した経歴を持つ。

井原は南カリフォルニア大学医学部在学中にウェブ・モバイルゲーム会社を立ち上げた。日本の大手ゲーム企業に売却したのち、帰国してITコンサルティングに従事。2008年にアジア圏を事業エリアに据えたブレズレン・アジアを設立し、13年にブランドコントロール日本本社として設立した。

2.ブランドコントロール対策を実施し誹謗中傷をランクダウン

通常、悪質なネガティブ情報の投稿に対して、多くの企業は弁護士を通じて削除要請を行なうケースが多い。投稿者の多くは顧客、不満を抱く社員、競合先などで、投稿が削除されれば削除要請が入ったことに気づく。すると不満や怒りが再熱してSNSで拡散され、ジタイが悪化することも多い。あるいは「ネガティブ情報の投稿者たちは仲間意識を持っているので、削除申請が知れわたると、そのサイトに関わっていなかった投稿者までも刺激して、無用な参加を招き、エスカレートさせてしまうリスクもある」(井原)という。法的施策は必ずしも有効ではない。

同社が展開するサービスの一つを紹介しよう

リスクサイトに対しては”ブランドコントロール対策”を実施する。自社ブランドの向上やレピュテーションマネジメントに役立つ先とを新設し、多くのページを上位表示させて、誹謗中傷サイトの検索順位をランクダウンさせる。さらに、メインサイトと新設サイト双方に対して継続的にSEO対策を施して、リスクサイトの出現に備える。

あるいは「Yaho!知恵袋」に対しては、Yahoo!検索エンジン1ページ目のリスクQ&Aを非表示化して、リスクQ&Aを中和し、中立Q&Aを投稿する。関連キーワード・サジェスト対策では、関連キーワードに表示させたい語句をマンパワーに動員して検索需要を高め、上位表示させる。一方で、削除したいサジェストそは別のキーワードを検索にかけ、上位に押し上げて、ネガティブサジェストの表示を防ぐ。

サービスの費用は、個人が月額10万~30万円、法人は年商100億円以下が30万~200万円、年商100億円が70万~1400万円。金融、不動産、IT、ネットワークビジネス、コンプレックス商材、美容関連、飲食店などからの依頼が多い。年間の依頼件数は約150件。サービス提供の成果は対策成功率94%、予見・予防率92%、リピート率87%に達する。

3.少人数主義の主眼は社内リスク対策

同業他社との差異は、ORM(オンライン・レピュテーション・マネジメント)の実施にあるという。米国本社が行なっている全8カ国対応の国際基準に沿った手法で、米グーグルが取り入れているサーチエンジン・アルゴリズムを分析し、グーグル検索エンジンの動向を予測する。その上で日本に応用できる施策を導入している。

クライアント獲得の営業を一切行わず、少人数主義に徹しているものも同社の特徴である。少人数主義は収益性に直結しているが、それ以上に社内リスクの対策が主眼だという。

「営業担当者を置くと営業目標を達成するために、一部の同業者でマッチポンプを仕掛ける例もあった。社外のエンジニアなどと結託して、ターゲットにした企業のネガティブ情報や関連ワードを投稿してもらい、悪評を立てたうえで対策の提案を営業していた。当社にそうした土壌が生まれないように現在の体制を固めている」

同社の手法は国家防衛にも適用できる。つい先日も井原は、マレーシアの国歌不安をあおり立てる書き込みが横行したため、対策を助言したのだ。

情報を制する旨とするブランドコントロール社へのニーズは広範囲にわたる。

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