株式会社ワクト 星山 雄史

Guest Profile

星山 雄史(ほしやま・ゆうし)

1982年、広島生まれ。インフラ系のITエンジニアとして活躍後、高校講師、ITベンチャーでの営業職を経て、2011年に株式会社ワクトを設立し、現職。

特集「全方向トラフィックカウンター」の技術とクリエイターとのコラボで”ワクワク”を創造

1.コンビニからの相談で生まれた交通量調査アプリ

交差点などで椅子に座ってカチカチと自動車や通行人を数えている人を見かけることがある。これは交通量調査と呼ばれるもので、行政機関と民間企業が実施しているケースに大別される。「カウンター」という機器を使って数えるのが一般的だが、カウンターに代わる革新的な技術が登場し、注目を集めている。

ITベンチャのワクトが開発した交通量調査アプリ「全方向トラフィックカウンター」がそれだ。現在の交通量調査は多くの人員とカウンターが必要だが、このアプリを使えばより手軽に、かつ効率良く交通量調査が行なえる。

スマートフォンの画面をタップするだけの簡単な操作で、上り・下りの2方向の車種べつ計測を行うことが出来る。交差点での車両3方向(直進右左折)と、歩行者の交通量を同時に計測することも可能だ。計測結果は地図上に表示することができるため、いつ・どこで計測を行ったのかすぐにわかる。また、車種別計測・交差点計測の計測方法に応じて、それぞれが見やすいフォーマットで表示される。

集計データはGPS(全地球測位システム)の情報から地図上にリアルタイムに反映されるので、最初からデータとして管理できる。従来のように集計結果をパソコンに入力するなどの作業も必要なくなる。

ワクトの会長星山雄史が、友人から相談を受けたのがきっかけだった。昨年(2016年)1月、大手コンビニエンスストアの新店舗開発に携わる友人が、コンビニ出店の立地調査のための交通量調査をもっと簡単にできないかというのが相談内容だった。
「私は企業がこういう調査をしていることを知らず、それならコンビニだけでなく、大手カフェチェーンやドラッグストアチェーンなどにもニーズがあるはずだと考え、すぐに開発に着手しました」

約2か月後にアプリが完成、3月に発売するというスピード展開となった。現在、埼玉県のある自治体はじめ、複数箇所で使われており、近く新たに1社契約がまとまる見通しだという。そのほかに、引き合いも多く、アプリを個別にカスタマイズしてほしいという要望も少なくないという。たとえば、交通量調査ではなく、大型商業施設やイベント会場内での人の流れを正確に把握し、テナントの配置などに活かすといったものである。

2.SES、請負、自社開発が事業の3本柱

ワクトは11年、システムエンジニアリングサービス(SES)事業を手がける会社として設立された。順調に事業が拡大、16年から企業のシステム開発を行う請負契約を開始したほか、自社でのソフトウェア開発にも乗り出した。現在、この3つが事業の柱。SESが売上高の約8割、請負が約2割を占め、自社開発はまだ1割未満にとどまるが、トラフィックカウンターの成功を弾みに拡大していく方針だ。

請負事業では16年、不動産会社の賃貸住宅用の検索システムを開発した。トラフィックカウンターを応用、地図上に掲載された賃貸物件情報をもとにアパートやマンションが探せるというもの。通常、賃貸物件の検索はリストから気になる物件を見つけ、住所を地図上で確認する。その近くの物件を見たい時は、再びリストに戻って探さなければならない。
「当社の開発した検索システムは、気に入った場所の周辺を地図上で探せるため、ネットサーフィンしやすいのが特徴です。トラフィックカウンターのインターフェースは地図上の何かを探すものであれば、さまざまなものに使えるので、今後色々なサービスに応用できると見ています」

この賃貸物件の検索システムは、デザインやムービーの専門企業と共同で開発した。
「トップページのデザインの絵は、17年の『カンヌライオンズ』でブロンズ賞を受賞した人が描いています。ムービーについては、大手企業のCMを手がけている会社です。クリエイティブに秀でた会社とのコラボ体制の確立により、多くな差別化がは図れたと思っています」

3.30年後でもワクワクする事業モデルを生み出す

売上高は創業から右肩上がりで増加。17年3月期は7億円を達成、18年3月期は10億円超を見込む。

この好業績を支えるのは、言うまでもなく人だ。従業員は8月現在37人、協力会社なども含めるとスタッフは120人を超えるが、さらなる優秀な人材の確保と、育成に力を注いでいる。

社名のワクトは「ワクワクファクトリー」の略で、「ワクワクするビジネスモデルを創造し続ける企業」を目指していると星山は言う。
「会社エオ創る時に一番意識したのは、抽象度を高めようということです。何が正解家は時代に左右される部分がある。30年後にITがあるかどうかわかりません。だから企業コンセプトにも、ITという言葉をあえて使っていない。ワクワクすること、新しいビジネスモデルであれば何でもいい。全方向トラフィックカウンターもその一つで、それぞれが将来的に独立していってほしいと考えています」

その言葉どおり、17年4月に不動産会社を設立。オフィス向け不動産賃貸ビジネスをスタートさせた。さらにこのほど、本社オフィスが入るビルのもうワンフロアを借りた。事業拡大に向け、星山はアクセルを踏み込んだ。

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