株式会社ルーフィ 渡辺 泰章

Guest Profile

渡辺 泰章(わたなべ・やすあき)

1973年生まれ。95年横浜国立大学卒業。大手GMSの店舗企画部門、営業戦略、子会社の監査、経営企画に携わった後、ネットスーパーの事業化を提案。プロジェクトリーダーとして第1号店を立ち上げるなど、同社のネット戦略を推進。2013年、大手アパレル企業のネット責任者として転職。14年TPOホールディングス常務取締役に就任。16年ルーフィ取締役に就任。17年1月、代表取締役社長に就任。

特集【業界を変革する】24時間365日対応の 緊急配送ノウハウを武器に安心安全、 物流マッチングサービスを提供する

1.依頼から平均3分で 100%の成約実績

ITの進化、スマートフォンの普及によって、利用者(ユーザー)とサービスやモノの提供者とをつなぐマッチングシステムの構築が容易になり、新たなビジネスチャンスとして広がりを見せている。
 EC(ネット通販)市場の成長による宅配量の急増、ドライバーの高齢化や人不足、長時間労働など、さまざまな課題から社会の注目を集めている物流業界。厳しい環境に置かれたその業界にあって、BtoB、緊急配送、「食」を中心とする冷蔵・冷凍配送、というニッチな分野ながら、顧客満足度の高いマッチングサービスを提供する会社がある。1996年の創業から電話・ファクスを駆使して、24時間・365日、緊急配送を希望する荷主と配送会社とのマッチングを実現させてきたルーフィ(旧社名クールシャトル)だ。
 同社が2016年4月からサービスを開始した、緊急配車車両マッチングサービス『ハコブリッジ』は、荷主の依頼から平均3分でほぼ100%成約するという利便性の高いもの。荷主の与信管理や配送会社の事前審査に加え、24時間365日オペレーターが常駐しトラブルの仲介も含めてサポートする体制を備えた安心安全なサービスとして、物流企業が創り上げた法人専門のシステムサービスとして高い評価を得ている。
『ハコブリッジ』の構築にあたり中心的な役割を担ったのが、現社長の渡辺泰章だ。
「今後物流業界で戦っていくためには、オンリーワンの武器をもっていないと厳しい。当社には20年以上にわたりアナログで地道に築き上げてきた『緊急』配送の車両手配のノウハウと信頼がある。それをWEBで提供できれば、必ず強い武器になる」
 渡辺は新サービス(現在の『ハコブリッジ』)構想当時を振り返る。
 このとき渡辺には物流業界に関する知見はほとんどなかったが、昨今の物流量の急増は、アマゾンをはじめとするBtoCのドライ(常温)配送によるものであり、ルーフィがドメインとするBtoBの冷蔵・冷凍配送については、まだキャパシティに余裕があると冷静に分析していた。またこれまでに経験したことのない取組みにしり込みする社内に対しては、ミーティングを繰り返し、あらゆる不安、意見、提案を吐き出させ、「なぜ、いま、こういうことをやろうとしているのか」を熱く語り続けた。ルーフィに関わる以前、渡辺は大手GMSチェーンの企画部に籍を置き、数々の「無から有を生む」プロジェクトに携わってきた。そのときの経験が生きたという。約半年の時間を経て、社内のベクトルがそろい、『ハコブリッジ』立ち上げに向け、社内一丸となってスタートを切った。
 現在『ハコブリッジ』を利用する企業は、荷主、協力配送会社を合せて500社あまり。17年10月からは関東地区だけでなく、中部地区での展開も始まっている。

2.構造改革にも着手 営業利益は16倍に

ルーフィには『ハコブリッジ』と並ぶ事業の柱としてネットスーパーの配送事業がある。大手GMSのネットスーパーや関東圏のSMを含めた来店宅配(店頭での購入品を自宅まで届ける)の受託事業で、年間の配達件数は約300万件、この分野では日本一の実績だ。
 だが、この事業に対し渡辺は「これまでのような成長は今後、望めなくなる」と踏んでいる。GMS在職時代に、自らネットスーパー事業を企画し、0から立ち上げた実績をもつが、その経験から、ネットスーパーが拡大を続けていくのは厳しいと考えているからだ。そうした考えもあり、『ハコブリッジ』を必死になって立ち上げたのだが、それを主導する傍ら、「『創造と再構築』を一人ひとりが徹底的に行なう集団に」を、スローガンに、社内の構造改革を積極的に進めてもきた。17年からは一斉に事業の「選択と集中」に着手し、筋肉質への転換を図ってきた。
「当社が今後成長を続けていくためにさまざまな試みを仕掛けている。この1年で社内から42もの立案があり、推進している。そのうち16項目はプロジェクト化を含めた新規施策だ。一方、社内のムダもなくしてきた。社員全員が苦しかったと思うが、その成果が確実に出ている」
 顕著な例が営業利益だ。本格的な構造改革に着手する前に比べて、営業利益は何と16倍に増えた。
 今後は、コンプライアンスの徹底、人事制度や給与体系の見直し、社内報奨制度の導入などにも着手する計画だ。

3.『ハコブリッジ』を入口に 「運ぶ」の価値を高める

『ハコブリッジ』の立ち上げから丸2年が経過した。登録企業(荷主、協力配送会社)も順調に増え、展開エリアの拡大にも取り組んできた。
「3年目となる今年(18年)からは、『ハコブリッジ』のASP展開を計画している。すでに複数社からのオファーが入ってきており、現在、クライアントニーズや費用感などをすり合わせ、最大公約数のニーズを商品のスペックとして盛り込むべく、調整中だ。今秋にはサービスを開始させる」
 同社の商品は「運ぶ」だ。渡辺はこの「運ぶ」に、競争力を高めるための付加価値づくりも進めている。「モノを運ぶ」という行為には必ずその前後に別の目的がある。例えばある店舗で在庫切れのために商品を届けなければならいという場合、店舗では商品が届き次第店頭に並べたり、倉庫の所定の位置に移動したりする必要がある。そこでドライバーは店舗へ「運ぶ」たけでなく、店舗スタッフに代わって、陳列棚への補充や倉庫に運び込む、というイメージだ。さらに、陳列棚まで行くのであれば、在庫確認や賞味期限チェックもできるだろうし、その状況次第では商品の発注を代行するということも考えられる。同社では、ドライバーの価値を高め、そして付加価値の高い「運ぶ」を実現しようとチャレンジしている。
 現在、中長期の成長を見据えて3カ年計画を策定中だ。具体的な売上げ目標も盛り込まれる予定だが、まず、『ハコブリッジ』によるBtoBと、ネットスーパー配達業務中心のBtoCを「50:50」(現状はネットスーパー業務の比重が大きい)にもっていきたいという。
 成長ドライバーとしての『ハコブリッジ』と、日本一の実績をもつネットスーパー配達業務。異なる対象を相手にするこの2つのエンジンが相互補完的に回り続けることにより、いまの厳しい物流業界においても安定成長が可能になる。
「この事業構造シフトの意味を、社員みんなが理解してくれている」
 渡辺は物流業界での勝ち残りに向けて、さらなるサービス拡大、エリア拡大を遂げるために新たな創造に挑む人材を求めている。

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