成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ
株式会社TRUNK
代表取締役会長

野尻 佳孝氏

GUEST

Guest Profile

野尻 佳孝(のじり・よしたか)

のじり・よしたか 1972年生まれ。
明治大学付属中野中学校・高等学校を経て、明治大学政経
学部卒業。
95年住友海上火災保険(現・三井住友海上火災保険)に入社。
ベンチャー企業支援部に在籍した後、98年独立、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズを設立し、代表取締役となる。2001年にはナスダック・ジャパン(現・JASDAQ)に上場させた。
10年代表取締役会長に就任。

第35回成長スピードを緩めてでも会社のコアバリューを確認すべきときがある

1.「ブライダルを変える」を モチベーションに起業

初めてお会いしたのは野尻さんがまだ会社を起こす前でしたね。

約二十年前のベンチャーの勉強会でした。

野尻さんは積極的に質問していて目立った存在でした。そのときはまだ企業にお勤めでしたよね。

ベンチャー企業支援部に在籍していました。日経新聞のベンチャー欄で取り上げられている会社に電話をかけ、「御社のリスクにマッチした保険を開発しますよ」と、そこの社長に会いに行っていました。商談の際の雑談で自分のビジネスモデルを説明すると、「面白いから出資するよ」と何人からも言ってもらえたので、じゃあ起業しようと思ったのです。

いくつか候補があっていまのビジネスに絞ったのですか。

IT、人材派遣、冠婚葬祭の3つにフォーカスしていたのですが、ITは目まぐるしく変化していて自分のなかでの理解が十分でなかったし、人材派遣は参入する資金がなかった。冠婚葬祭、特にブライダルなら、中学生、高校生の時代から「パーティーを楽しむ」ムーブメントをつくってきたという自信もあったし、自前でできると思ったのです。

ブライダルの世界は激変しましたね。昔は必ず仲人がいたし、いまのように映像が使われることもほとんどなかった。

起業前、結婚式に出席したとき、かしこまった雰囲気でゲストたちが楽しそうに見えなかった。そこで彼らに「映画のワンシーンみたいな結婚式はどう?」と聞くと、みんと集中をしようと、改めてウェディング一本に絞り込みました。

そこがターニングポイントになったわけですね。それから先は順調に成長路線を走って来られた。

いや、その後もありましたよ。リーマンショックの少し前ですが、お客様や社員の顔を見るよりも利益を追求して成長に走りすぎちゃったんですよね。
株主総会の場である株主の方が「ずっと御社のファンで、最近結婚式をしたが、良くなかった。期待を裏切られた」と発言されました。
それですぐに役員を集め「成長ばかりに目が行ってしまい申し訳ない」と謝りました。もう一度原点に返って「楽しい思い出の残る結婚式をプロデュースしよう」と確認し、新規出店もストップ、関連会社も売却し、二年ほどかけて企業理念を社員全員で作り直しました。

コアバリュー(価値観)としての、「誠実、貢献、革新、独創」の4つです。
これに合わなければ、人も採用しないし、新規事業も行ないません。

当社で式を挙げられる方たちにも、これから大切にしたい共通の価値観を事前に考えておいてもらうのですが、後々、「あのとき考えておいてよかった」と言われることが多いですね。

結婚したときの原点に気づけるんですね。でも、そもそもウェディングビジネスというのは、式を挙げてからもお客さんとの接点があるということですか。

当社ではそうですね。式前の打ち合わせを、弊社は30 回やります。
カスタマーセンターからも「問題や不安はありませんか」と挙式前に少なくとも5回くらい連絡を入れ、式後は新郎新婦だけでなく親御さんやゲスト全員にアンケートをとります。

新郎新婦からは100%ですが、ゲストの方でも10%以上の回収率です。
弊社で結婚式を挙げられた方たちには、これから結婚する2人へのアドバイザー役として「アンバサダー」になっていただけるのですが、希望される方たちがほとんどです。結婚式の顧客満足度は圧倒的日本一になりました。

2.17 年開業のホテルは 利益拡大に貢献

ところで、成長のスピードを緩めることに対する恐怖心はなかったんですか。ライバルに抜かれてしまうんじゃないかとかいったような。

もちろんありました。倒産も覚悟しましたし、怖かったです。
幹部からも見捨てられるんじゃないかと思ったこともありました。売上げも落ち込み、私は下を向いてばかりいました。
でも「(私が)初心に戻るなら応援する」と彼らは励ましてくれたのです。
それで何とか厳しい時期を乗り切れたのです。本当に社員のおかげです。
怖くてもブレーキをかけるべきときには、経営者としてそうすることが必要だと学びました。

実に重みがある話ですね。

ウェディング事業の立てなおしが終わるころになると、社員から「(あなたは)“ゼロをイチにする”ことが向いているのだから」と送り出されるようになり、いまはひとり海外で新規事業の立ち上げを担っています。このホテル(今回の対談場所であるTRUNK)は昨年(17年)の5月に開業したばかりですが、す
でに利益に貢献してくれています。

個性的でスタイリッシュなホテルですね。

経済紙フォーブスから「世界のCoolなデザインホテル5選」に選出されました。また、新規事業として保育所の経営を目的とした合弁会社(アンドカンパニー)も立ち上げています。企業理念も社員に浸透し人材が育ってきているので、安心して任せられます。

野尻さんはブライダルを変えましたが、これから新たに変えていきたいものはありますか。

いまは若い人を中心にミニマルな暮らし方を好む人が増えています。これからは家電や家具、住宅がAI(人工知能)と結びついて、余計な物を持たずに便利に暮らせるようになるのではないでしょうか。
弊社で結婚式をした人たちがどんなライフスタイルを形成したいのか、というデータの蓄積がある強みを生かして、ライフスタイルをもっとかっこよくスマートにシンプルにという提案をしていきたいですね。
創業20年目にして、ベンチャー魂を再びたぎらせようと考えているところです。

おもしろいことがいろいろできそうですね。ありがとうございました。

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