株式会社ベルーナ 安野清

Guest Profile

安野 清(やすの・きよし)

1944年埼玉県生まれ。68年9月、創業。77年に友華堂(現ベルーナ)設立、代表取締役社長に就任。83年より衣料品の通信販売を開始。以後、商品や事業の拡大、販路の多角化を図り、現在は顧客データベースを活用した『通販総合商社』としてさらなる進化をとげている。11年3月期売上高は1034億円。11年12月、経団連入会。

特集香港に物流拠点を開設 アジア各国でワイン販売へ

1.ベルーナのワイン事業の勢いを物語る

 本誌読者のワイン好きに朗報をお伝えしよう。ベルーナがメルマガ会員を対象に毎月抽選で月替わりのワインをプレゼントしているのだ。メルマガ会員に登録すれば抽選に参加できる。
 このキャンペーンは2013年3月まで実施する。月替わりのラインアップは12年12月「ヴァルデラヴィア・カバ・ブリュット」、13年1月「シャトー・ムーラン・ブラン’10」、2月「レアル・マドリード・オフィシャルワイン赤」、3月「シャトー・レザルカ’10」。
「4年連続ワイン通販売上ナンバーワン感謝記念」と題したこのキャンペーンは、ベルーナのワイン事業の勢いを如実に物語っている。

2.ポテンシャルにあふれるアジア各国でのB To Bマーケット

 本誌の前号(第4号)でも記したように、ベルーナのワイン通販売上高は、2011年度の国内ワイン通販売上高ランキングで4年連続1位となる、27億3000万円を達成、第2位企業(16億800万円)に大差をつけている。
 今期に入ってもベルーナのワイン事業は好調に推移し、12年度上半期は前期比10%の伸びを示した。12年度の売上高は33億円を見込む。国内ワイン通販売上高ランキングでの5年連続1位の達成もほぼ間違いないところだろう。

 この勢いを力強く支えているのが、世界各国でのベンダー発掘と育成である。ベルーナでは現在数十社のベンダーから直接仕入れているが、いずれもベルーナ専用の流通ラインを開設し、ベルーナ仕様のミックス梱包(複数の商品を同じ箱に詰める)を行なっている。この方式を実現することで、商社経由に比べて、物流全般の効率を格段にアップさせることができた。グルメ事業本部の佐久間樹本部長は、こう話す。
「現地の展示会で発掘して、当社といっしょにラインを作り上げてきたベンダーばかりだ。取引きを始めたころは小さな酒屋だったが、いまでは日本円で億単位の年商を上げているところもある」
 13年秋までにベルーナはこの物流機能の拠点を香港に全面移管する計画だ。仕入機能を香港に集中させ、アジア各国のワイン市場を開拓する。日本国内への配送も香港から行なっていく。
 ベルーナがワイン事業の海外展開を始めたのは2年前のことだ。「日本で成功したノウハウでアジア各国に出ていく」(グルメ事業本部海外事業部・渡久地政理課長代理)という方針から、10年に上海でワインの卸売り事業をスタートした。12年5月、香港に現地拠点を設立、10月から移管作業に着手した。
 渡久地課長代理は今後の期待を込めてこう述べる。
「中国では大手企業が新規事業でワインの取り扱いを始めるなど、ワインがブームになっている。香港、台湾、韓国でもワイン市場が拡大している。当社が香港に構築する物流拠点では多様なミックス梱包が可能になり、これまで以上に商品の幅を広げることができる」
 香港での物流拠点には、どのようなメリットを期待できるのだろうか。
 まず一括管理・発注によって、スケールメリットが生まれ、仕入原価を削減できる。たとえば、香港ですべての物流をコントロールすることでコンテナ効率を向上させれば、輸送業者との価格交渉も優位に進められる。
 当面、アジア市場に対してはレストランなどBtoBをメインにすえる。
 アジア市場へのアプローチは国別に異なるが、パートナー企業と提携して、現地の商慣習に沿った実績づくりに重点を置く方針だ。アジア各国には、日本の外食企業が大手チェーンからベンチャー企業まで続々と進出している。ワイン事業のB to Bのアプローチ先はポテンシャルにあふれている。
 B to Cへの参入にはもう少し時間をかける。現在はまだ、国内事業で培ったカタログとネットの通販のノウハウをどう生かしていくかの調査段階にあり、通販事業の展開はまだ先だという。

3.PBワインを開発ベルーナブランドの構築に注力する

 一方、国内のワイン事業では、どんな施策に取り組んでいくのだろうか。国内のワイン市場は、10年度の国内酒類市場が横ばいだったなかで、前年比9・7%の伸びを示した。11年度は東日本大震災の影響で一時的に縮小したものの、現在は回復基調にある。第7次ワインブームが到来したという見方もあるほど、活況を呈している。
 こうした追い風を受けて、ベルーナは、プライベートブランド(PB)ワインを開発、ブランド構築に力を入れている。第1弾のアルゼンチンワイン「コンドール・アンディーノシリーズ」は、発売後2年で約25万本の販売実績を記録した。第2弾としては、フランスワインのPB商品を発売する予定である。
 PBワインの展開は国内に限らない。今後の成長を期待できるアジア各国の市場も視野に入れている。「競争力のある品質と価格のPBワインを開発していく」(ベルーナ広報担当者)という。
 さらに、今秋、年越しや新年のお祝いシーズンの需要を見込んで、ノンアルコール・スパークリングワインのラインアップを新たに加え、ベルーナの独占販売として「ビエール・デリーズ」(3本セット・2980円)を発売した。このワインを生産するヴーヴ・アンバルは1898年に設立された醸造業者で、11年の世界スパークリングワインコンクールで金賞を受賞している。
 ベルーナのワイン輸入本数は11年度に約310万本に達し、取扱商品数は約3600に及ぶ。この取扱実績を背景に、香港の物流拠点を本格稼動させるベルーナのワイン事業は、今後、日本国内からアジアのマーケットへと劇的に成長を遂げていくのだろう。

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