株式会社ベルーナ 安野 清

Guest Profile

安野 清(やすの・きよし)

1944年埼玉県生まれ。68年9月、創業。77年に友華堂(現ベルーナ)設立、代表取締役社長に就任。83年より衣料品の通信販売を開始。以後、商品や事業の拡大、販路の多角化を図り、現在は顧客データベースを活用した『通販総合商社』としてさらなる進化をとげている。11年3月期売上高は1034億円。11年12月、経団連入会。

特集「ピンポイントで顧客開拓をサポート毎月40社以上が利用するベルーナダイレクト」

1.通販市場は右肩上がりを続けている

2012年3月期決算で、ベルーナの連結売上高は前年度比6・6%増の1103億円、経常利益は12・4%増の71億5000万円を記録した。好業績の背景には、複数の事業によるシナジー効果を実現させた同社の成長力、さらに通信販売市場の伸びが挙げられる。
 通販市場は右肩上がりを続けている。公益社団法人日本通信販売協会の調査によると、2010年度の通販市場は前年度比8・4%増の4兆6700億円。過去10年で約2倍に拡大した。
 新規参入も多い。ところが、通販事業を軌道に乗せるには商品受注から発送、代金回収に至る業務フローの確立と、莫大なシステム開発コストを要するのが実状だ。

2.20 種類以上のカタログから世代別・ニーズ別にターゲットを絞り込む

 ベルーナダイレクトの瀬下泰弘部長は説明する。
「システム開発には億単位のコストがかかることもある上に、バージョンアップも頻繁にある。中小企業は、全て自前で通販事業を行なうことが現実的でないと考えるようになっている」。
 ここにベルーナが展開するソリューション事業のニーズが広がっている。この事業では、他企業の商品やサービスのプロモーションを支援する「ベルーナダイレクト」、コールセンターや物流機能を提供する「通販代行サービス」の二つを提供。ともに総合通販事業の伸張に合わせて拡大を続け、ソリューション事業の売上高は12年3月期に前年度比12・6%増の40億1000万円となった。
 ベルーナダイレクトのサービスは①会員に発送する商品と一緒に広告やサンプルを同梱②各通販カタログに広告を封入③カタログへの広告掲載④ベルーナ会員へのDM送付―などをラインアップしている。
 ベルーナダイレクトの核となるのが会員1300万人のデータベースだ。会員の約8割が女性で、その約80%が40~60代のミセス層。データベースには購入歴、購入頻度、、決済歴なども記録され、さまざまな属性から絞り込んだプロモーションを実施できる。それだけではない。「1300万人のうち毎年400万人弱が購入している」(瀬下氏)という。それだけの履歴が更新されているのだ。
 このデータベースを基幹インフラとしたアプローチの特徴は、ピンポイントで高いレスポンスを期待できることである。
 商品同梱では、購買意欲の高い最新の顧客に対して、開封率100%のアプローチができる。カタログへの広告封入では、通販利用実績のある見込み客にアプローチできる。しかも、世代別・ニーズ別に発行されている約20種類のカタログから最適なものを選択し、ターゲットをピックアップできる。40~60代なら「ベルーナ」、30代なら「ルアール」、20代なら「リュリュ」というように。
 カタログへの広告掲載では、季刊の有料通販誌「リュリュ」を提供している。同誌の発行部数は20~35万部で、書店と全国のコンビニエンスストアで販売。同誌は保存率が高いため、長期にわたって販促効果を期待できるという。

3.ロイヤリティが高く、リピート購入も多いカタログ利用のメリット

「お客様は当社のカタログ到着を楽しみにしているので、たとえ他社の取扱商品でも、当社を通して購入するという感覚が強い」(瀬下氏)
 ベルーナダイレクトの利用社数は毎月40社前後。利用企業は通販、旅行サービス、来店促進、エステ、マンション販売、健康食品通販など多業種にわたる。
 それにしても、今やネット通販の普及が著しく、その勢いはますます強まっていく。なぜ同社はカタログ通販で業績を伸ばせているのか。紙媒体の特性はどこにあるのか。瀬下氏は語る。
「カタログには商品にまつわるストーリーや商品の利用シーンなどを掲載できる。いわば世界観を示せるので、カタログでないと響かないお客様もいる。ネット通販がプル型ならカタログ通販はプッシュ型である」
 以前ベルーナダイレクトを利用していた、ある健康食品販売会社はコストダウンを理由に、販売チャネルをベルーナのカタログから、他社のネットに切り替えていた。ところが、ネットでは購入客がリピートしてくるかどうかを見切れない。その結果、2年ぶりにベルーナのカタログに戻ってきたのである。
 こんな出来事もあった。受注業務の応援のため、瀬下氏がコールセンターのデスクに就いた時である。会員の女性から注文の電話が入り、受話器からはカタログをめくる音が聞こえてきた。さらに、その後ろで数人の女性の話す声が聞こえてきたのだった。
「女性達はカタログを見ながら商品を話題にしていたのだろう。紙媒体の力が現われた場面だった」(瀬下氏)
 日本通信販売協会はさる6月12日、4月度の通販市場売上高を発表した。1380億8400万円で、前年同月比6・9%増だった。市場は拡大基調を続けている。同社ソリューション事業の売上高は4月度に前年同月比27%増、5月度は20%増で推移。ベルーナダイレクトのニーズは着実に拡大していると言えよう。

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