株式会社ワキュウトレーディング 高橋和久

Guest Profile

高橋和久(たかはし・かずひさ)

1962年高知県生まれ。81年高知工業高校卒業後、食品会社の千葉県内の営業所に勤務。87年食品を扱う都内の商社へ転職。95年、岩手県で独立、開業。Facebookのフォロワーは2800を超える。実家は兼業農家。

特集生鮮マッシュルームの国内拡大に心血注ぐ

1.国産生鮮マッシュルームの取扱量は業界トップ

 世界で最も多く食されているキノコはマッシュルームだ。しかし、日本ではマイナーな存在である。シイタケやシメジ、マイタケ、エノキに比べ、食卓にのぼる回数は圧倒的に少ない。日本人にとってマッシュルームは洋食の食材というイメージが強い。だが実際は、シイタケやシメジなどと同じように和食でも中華でも何でもいける。キノコの中で唯一「生」で食べられるので、サラダにも合う。もちろん栄養も豊富だ。

「多くの人が缶詰のマッシュルームを食べて、それがマッシュルームの味だと思っています。ところが、生のマッシュルームをかじると、こんなに味や香りがあったのかと驚きます。だからマッシュルームの本当のおいしさを消費者に知ってもらいたいのです」

こう熱く語るのは、マッシュルーム専門の商社、ワキュウトレーディング社長の高橋和久だ。国産生マッシュルームの取扱量で業界トップを誇る(シェア約25%)。

同社の事業の柱は二つある。一つは、マッシュルームの生産に欠かせない種菌をはじめとする各種資材の欧州からの輸入と、国内生産者への販売。もう一つは、その種菌で栽培された生マッシュルームの卸売だ。

2.中国赴任期間中に生産から流通までを学ぶ

高橋はマッシュルームのおいしさに魅せられ、起業した。他のキノコのように日常的に食べてもらいたいと願い、市場を少しずつ開拓してきた。いわば国内生鮮マッシュルームのパイオニア的存在と言ってよい。

高橋は「30年ほど前に大手外食チェーンの関連会社でマッシュルームの仕入れを担当したのが、私とマッシュルームとの出合いです。当時はカナダから輸入していて、成田空港に着いたマッシュルームの箱を開けた時にものすごく甘い香りがしたんです。サンプルを料理して同僚と食べたら、本当においしくて感動しました。それからマッシュルームにのめり込みました」と振り返る。

マッシュルームの調達先がカナダから中国の関連会社に移ったのを機に、現地生産農場の管理者として中国に派遣される。カナダ人の専門家と二人三脚でマッシュルームの品質向上、生産増強に励んだ。4年間の赴任中にはマッシュルームの生産から流通まですべてを学んだ。

帰国後、マッシュルーム担当から異動したのを機に、95年に独立(法人化は2001年)。中国赴任中に知遇を得た日本人商社マンの紹介で、東北の生産農場の技術指導をすることになる。その農場は品質が安定せず、生産量も伸び悩んでいた。高橋は欧州の最新資材や技術を導入し、1年目に生産量を年間80トンから160トンへと倍増させた。その成果が業界で話題となり、全国の生産者からコンサルティングの依頼が舞い込むようになる。

生産者への技術指導の一方で、国内マーケットの開拓にも取り組み、生産されたマッシュルームの販売も手がけるようになり、現在のビジネスモデルが確立されていった。

3.料理専門店、レシピ本などでマッシュルームのプロモーション

現在、国内のマッシュルーム生産量は年間約8000トン。高橋が独立した95年当時は約2500トンだったというから、約3・2倍に増えたことになる。

市場規模が小さいうえ、栽培が難しいこともあり、マッシュルーム市場は相場が安定している。生産者は全国に十数ほどで、キノコ生産の大手は参入していない。輸入品に関しても、生鮮マッシュルームは足が早く、物流での品質管理が難しいため、「生鮮マッシュルームの国内市場を脅かされることはない」という。

もちろん、だからといって安心、満足しているわけではない。

「日本人の生鮮マッシュルームの消費量も少しずつ増え現在、1人あたり年間約60グラムです。しかし、エノキは1キロも食べられています。我われはエノキを目指してがんばっています。まずは20年の東京オリンピックに向けて、生産量1万トンを目指して業界をあげて取り組んでいるところです」

高橋が中心になり、積極的なプロモーション活動を展開している。たとえば、スーパーに特設売り場を設けてもらったり、大手食品メーカーとコラボ商品を手がけたりしている。
また、マッシュルームのおいしさをじかに知ってもらおうと、別会社を設立。マッシュルーム料理専門店「MUSHROOM TOKYO」を14年に原宿・表参道にオープンさせた。16年には同店料理長監修のレシピ本も出版。さらには、シンガーソングライターの嘉門達夫氏にマッシュルームの歌「マッシュルーム ラブ」をつくってもらった。日本でマッシュルームの人工栽培を初めて成功させた「キノコ栽培の父」と呼ばれる森本彦三郎氏の生誕日にちなんで「8月11日」を「マッシュルームの日」に制定した(日本記念日協会認定)。

マッシュルームの国内市場の伸びとともに、ワキュウトレーディングも事業を拡大している。海外市場の開拓にも乗り出した。国内生産トップの芳源マッシュルーム(千葉県香取市)と連携し、ベトナムで生産・販売を始めた。レストラン事業も多店舗展開する計画で、すでにベトナム・ホーチミンへの出店が具体的に進んでいる。

業績は好調。16年7月期の売上高は16億8000万円で、今期は18億5000万円、来期は20億円を見込む。IPO(新規株式公開)も視野に入れ、高橋はアクセルを踏み込んでいる。

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