株式会社ベルーナ 安野 清

Guest Profile

安野 清(やすの・きよし)

1944年埼玉県生まれ。68年9月、創業。77年に友華堂(現ベルーナ)設立、代表取締役社長に就任。83年より衣料品の通信販売を開始。以後、商品や事業の拡大、販路の多角化を図り、現在は顧客データベースを活用した『通販総合商社』としてさらなる進化をとげている。11年3月期売上高は1034億円。11年12月、経団連入会。

特集化粧品の通信販売でグループ全体の収益に貢献「オージオ」

1.ヒット商品は誕生しやすいが、浮き沈みが激しいのも、業界の特徴

 女性顧客の安定的な需要を見込んで、化粧品や健康食品分野の通信販売への参入企業が増えている。ヒット商品が誕生しやすい一方で、浮き沈みが激しいのも、この業界の特徴だ。その点、オージオは多くの同業他社と一線を画している。
 同社はベルーナの100%子会社で、ベルーナの通販機能とノウハウをフルに活用している。しかもベルーナの連結子会社8社のなかでも稼ぎ頭となっている。
 13年3月期の年間売上高は56億円、営業利益は約6億円を見込んでいる。
 売上構成比は化粧品が85%、健康食品が15%というように、化粧品がメインとなっており、健康食品の品揃えもプラセンタ、コラーゲン、ヒアルロン酸を配合した食品など美容志向のものが多いのが特徴だ。

2.下降トレンドから回復160万人顧客をベースに増収を目指す

 従来からベルーナは、リピート商材として健康食品を提供していた(現在は株式会社リフレとして運営)が、さらに化粧品を新規事業として発足させ、2000年3月に株式会社オージオを設立した。
 安野明子社長はベルーナに新卒で入社後、複数の部署を経て企画室で新規事業を担当し、オージオ設立から6年目に社長に就任した。現在までをこう振り返る。
「設立して数年間は赤字が続いていたが、03年から業績が上向きだして、06年には売上高が65億円に達した」
 しかし、その後売上高の伸びは低迷、5年にわたってダウントレンドを刻むことになる。
「化粧品通販市場の競争の激化、商品開発の不足などによる顧客離れが原因だったと考えている。だが、現在は回復基調に入った」(安野社長)というように、12年3月期には前年の売上高約46億円から約51億円へと5年ぶりに増収を達成。今期(13年3月期)も第三四半期時点では前年を上回るペースで伸長を見せている。
 化粧品通販業界は顧客の低価格志向が進んでいるうえに、大手はもちろんのこと、単品でのヒットを狙う新規参入企業までがしのぎを削る。オールインワン化粧品(1本で化粧水・乳液・美容液・クリームなどの機能を持つ)のように、フルラインを展開する大手企業からは生まれにくい商品が売れ筋になるなど、大手、中小が入り乱れての激戦が繰り広げられている。こうしたなかで、勝敗を大きく分ける決め手はリピーターの獲得だ。
 同社の顧客リストは現在160万人にのぼる。ベルーナ会員からの獲得顧客がその30%を占めるが、残りの70%は独自に獲得したものだ。新聞折込みチラシを中心に、ベルーナに蓄積された会員獲得のノウハウを投入した。

3.コールセンターに届く顧客の声を商品の開発、販促施策に生かす

 顧客のボリュームゾーンは40代~70代の女性で、平均年齢は50歳。安野社長は「高年齢化により女性の人口構成はミセスがますます増え、ミセスの心をがっちりつかまえた企業が成功を収める」と話す。だからこそ、同社が展開する販促ツールは折込みチラシ、テレビCM、新聞広告、月刊のカタログ誌などがメインになる。
 基幹カタログ『OZIO Beauty』(オージオ ビューティー)は、カタログというよりも情報誌に近い。商品紹介だけでなく歴史上の活躍した女性の生涯、旬の食材を使用したレシピ、占いなど女性誌の人気要素が盛り込まれ、さらに読者の年齢を考慮して、本文の文字も大きめにデザインされている。
 また、販促施策として、値引きや割引券の発行、プレゼントの提供、トライアル販売などを定期的に実施する。こうした取り組みの結果、売上高に占めるリピーター率は80%を占めるまでになった。
 同社が展開するブランドはラインアップの化粧品を取り揃える「オージオ」とオールインワン化粧品を中心に展開する「なちゅライフ」の2つである。「他社同等商品に比べ低価格に設定している」(安野社長)こともあって、リピート購入につながっている。
 商品アイテム数は、化粧品が約180アイテム、健康食品が20アイテム。新商品は全カテゴリーで年間30アイテム程度になる。
 こうした商品の開発には、ベルーナグループの強みでもあるコールセンターの機能が活用されているという。コールセンターに寄せられる顧客からの声を、ダイレクトに商品づくりに反映させているのだ。安野社長は「お客様の声をそのまま反映してもヒット商品につなげることは難しいが、新商品を開発する際の貴重なヒントにしている。また、パッケージの使い勝手のように、すぐに改善できるものは、お客様からの意見があれば、即座に実行に移している」と説明する。
 社内の会議にはコールセンターのオペレーターが出席するものも多い。本社の企画スタッフだけの議論では、ややもすれば思考が片寄りがちになってしまう。この通弊を回避するために、会議ではコールセンターのオペレーターが顧客の生の声を報告している。こうして顧客ニーズの変化や多様化をタイムリーにキャッチアップし、商品の開発や販促施策につなげている。
 今後の経営目標は明らかにしていないが、安野社長は新たな展開にも積極的にチャレンジし、さらに長期的には年間売上高100億円というビジョンを描いている。

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