株式会社エフアンドエム 森中 一郎

Guest Profile

森中 一郎(もりなか・いちろう)

1961年、大阪府生まれ。 立命館大学卒業後、84年株式会社日本エル・シー・エー入社 、87年に株式会社ベンチャーリンク転籍、西日本の営業を統括。90年7月、従来の夢であった20代での独立起業を実現するため退社。株式会社エフアンドエムを設立し、代表取締役に就任。2000年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン(現・JASDAQ)上場を果たした。

特集「返済不要、使途自由の『助成金』を活用すべし」

1.『助成金』国からの公的支援制度

『助成金』と聞きどのようなものを想像しますか?

 そうです。国からの公的支援制度です。
 しかしながら、手続きが煩雑なこともあり、意外と詳細を知られていません。厚生労働省管轄分の助成金は中小企業にとって使いやすい制度です。それは、受給した助成金は他の補助金と違い、返済不要で資金使途が自由だからです。
 なぜ返済する必要が無いかというと、原資に関係があります。助成金の原資は税金ではなく、雇用保険の一部だからです。
 雇用保険には、働いている人が失業したとき、一定の所得保障を行なう「失業等給付」の制度がありますが、これ以外にも『雇用二事業』と呼ばれる制度があります。失業を予防し雇用の安定を図る制度(雇用安定事業)と、知識や技能の向上を図る制度(能力開発事業)です。助成金の予算はこの二事業内に編成されます。
実は、この雇用二事業にかかる部分は事業主の方のみが雇用保険料として納めているのです。どのくらい納めているかというと、一般の事業で総賃金の1000分の3.5。建設の事業で1000分の4.5という割合です。

2.5種類以上の助成金を受給したことがありますか?

 つまり助成金の原資は事業主が払い続けているわけですから、受給漏れは損になります。
 では、助成金の効果とはどのようなものでしょうか。
 たとえば助成金を100万円受給したとします。助成金として会社に入ってくる100万円は売上の100万円と同じではありません。助成金は雑収入です。つまり、100万円の利益が上がったことと等しくなります。
 仮に利益率5%の企業が100万円の利益を上げようと思えば、新規で2000万円の受注をする必要があります。昨今の厳しい経営環境において、それは容易なことではありません。「知らなかったから受給できなかった」では余りにももったいないことです。ぜひ、受給漏れのないように最新の情報収集に努めてください。
 とはいえ、なかなかうまく受給できていないのが現状です。私もよく講演の中で『助成金を受給したことがありますか?』と質問します。会場によっては半分以上、平均でも3割くらいの経営者が受給されているとお答えになります。
 しかしながら次の質問をするとほとんどの方の手が上がりません。
『5種類以上助成金を受給したことがありますか?』
 つまり、助成金を受給したことがあってもまだ受給漏れの可能性があるということです。
 なぜなら、現在助成金は約60種類もあるからです。約60種類あるうちの5種類なら該当するものがあると充分考えられます。つまり約60種類も助成金があることを知らないがために、「当社には該当しないだろう」とあきらめている方が多いだけだということです。

3.助成金の受給漏れを防ぐ2つのポイント

 では、どのようにしたら助成金の受給漏れを防ぐことができるでしょうか。
 まずは情報収集が重要です。
 助成金の内容は毎年改正されます。しかし残念なことにあまり告知されていないのが実情です。ハローワーク(公共職業安定所)は各地にあり、採用などで利用する方も多いため、比較的情報を得やすく、そのためハローワーク管轄の助成金の受給漏れは少ないかもしれません。一方で、厚生労働省の外郭団体が管轄している助成金は、まずその施設の場所が分からない、数が少ないなどの理由により情報が入ってきづらいのが現状です。しかも、各都道府県に1ヶ所というところが多いため郊外の経営者は特に情報収集が難しいと言われています。
 改正時期だけでも顧問社労士等に依頼して情報収集することをお勧めします。
 もうひとつは、就業規則の整備です。実は助成金の中には会社のルールを変更すると、受給できる助成金があります。
 国の雇用を中心とした労働政策に対して、政策活動に早期に取り組んだ企業に対し、褒賞のような意味合いで支給される助成金があります。たとえば、定年の延長や、就職困難者の採用、パートタイマーの正社員雇用、最低賃金の引き上げなどです。これらの条件を、義務化・制度化に先駆けて就業規則に記載し運用した場合に受給することができます。しかし、一般的な就業規則を使っている場合や借り物の就業規則など自社に合ったものを作成していない企業は受給に失敗しています。
 助成金を受給するためにルールを変えるのは本末転倒ですが、ルールを変更する予定がある場合には、その見直しによって該当する助成金がないかどうか確認することをお勧めいたします。
 最後に、雇用環境の改善につながるような行為・活動が助成金の支給対象になることが多くあります。経営判断が従業員にとってプラスになることである場合には、何らかの助成金が該当することが多いので、情報収集することを忘れないようにしてください。

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