トラスティーパートナーズ株式会社 関野 大介

Guest Profile

関野 大介(せきの・だいすけ)

1985年、東京都大田区生まれ、神奈川県横浜市育ち。2004年にクルーガーグループ株式会社に入社し、NHK受信契約締結事業に携わりトップ営業として活躍。06年にプロパティエージェント株式会社に入社。不動産コンサルティング事業で頭角をあらわし、同社でもトップ営業となり、不動産業界未経験入社として、同社初の営業部長に就任した。理念の追求により、13年にトラスティーパートナーズ株式会社を設立、代表取締役社長に就任。多角的な事業を展開し、顧客とのさらなるパートナーシップ構築を目指す。創業以来、増収増益を続ける。

特集完全紹介制型の唯一無二の不動産コンシェルジュを目指して

1.会社設立時に抱いた3つの思い。

不動産業界という枠にとらわれず、顧客との強固な信頼関係を創出し続ける会社がある。今年(2017年)で設立4年目の急成長ベンチャー企業、トラスティーパートナーズである。

トラスティーパートナーズ代表取締役社長の関野大介は、不動産による〝人生設計〞というワードに対
して資産運用のサポートをする前職で不動産コンサルティング事業に従事し、トップ営業マンとなり未経験の領域にも関わらず、実力で営業部長に昇進した。だが、独自の考えと理念を果たすために「違う道を目指そう」と心に決め、関野は同社を離れ、2013 年9月に、トラスティーパートナーズを設立した。

関野が設立時に抱いた思いは3つある。

第一には、お金の価値を社員や顧客にきちんと伝える会社になること。そして、正当な稼ぎ方を知り、自分に投資することに導いていく会社である。

第二に、設立10年以内に9割近くの企業が消滅していくなかで、継続してステークホルダーとともに成長していく会社にすること。
「成長する会社には社員の成長できるタイミングがたくさんあるので、その環境を提供したい」と関野は述べる。2020 年には、IPO達成を掲げているのも、世の中の会社員に一握りもいないIPO経験という貴重な機会をともに働く仲間に提供したいからだ。

そして第三に、社員にとっての良い居場所をつくること。関野が定義する良い会社とは「当たり前のように女性が活躍する会社」、「年齢や学歴を問わず社員を評価する会社」「休日でも社員が会社に行きたいと思いたくなる会社」、「常識観にとらわれず常識を変えていける会社」である。

例えば利益を上げ続けていれば週休2日制という慣例にとらわれる必要はなく、週休3日制にしてもよい
と考えている。

こうした思いは、関野自身の前職時代の振り返りから沸き上がったという。
「稼げない社員は価値を創出していないのと同じ、辞めてもらった方が良い。代わりの人間はいくらでもいる。本当にそう思っていた。しかし、前職を辞める際には、お金と営業スキルとちょっとした経験値しか残っていないことに気づき、会社のあり方を考え、社員は〝人材〞でなく〝人財〞であると意識が変わり始めた」

関野のこうした熱い思いは理念に基づき具体化されている。
●基本理念「社員は家族であり、同じ目的を持った同志である」
●経営理念「我々自身が心から良いと思えるサービスを提供致します」
●企業理念「お客様の〝笑顔〞を創造し、信頼できるベストパートナーとなり、日本を代表する企業を目指します」

どの項目にも、関野の経営思想が明確に反映され、熟慮を重ねて作成したことが察せられる文面である。

2.顧客との強固な信頼関係 構築を基盤とした事業展開

同社は、投資用ワンルームマンションを販売するアセットマネジメント事業を主軸に、PRマーケティング事業ではWEBマーケティング手法やイベントプロモーション、SNSプロモーションの企画・提案、モデルのキャスティングを展開。パートナーセールス事業では、製品・サービスに関する知識や販売方法のノウハウを提供し、セミナーや営業キャンペーンなどで販売代理店の営業支援を行なっている。

2017 年4月からは新たに2つの事業をスタートさせた。

ひとつは、不動産購入によって難渋を強いられている顧客の救済である。
不動産投資を行なう顧客は、営業担当者との付き合いで購入した人、強引に押し売りされた人、積極的に購入した人など、いくつかに分類できるが、この新規事業で対象にするのは「押し売りされた人」である。 

購入から1〜5年後に連絡をしたら何の連絡もなく営業担当者が退職していたり、物件管理が履行されて
いなくても気づかない、というケースだ。いわば市場に放置されており、「うちはしっかりとサポートしますから」と新たな事業者に勧誘・説得されると、また新規購入をしてしまうという市場がよく見受けられる。

この層を救済するために、同社では無償でローンの借り換え相談に乗っているのだが、処理できるまでに通常3ヵ月程度はかかり、その間は、担当者の人件費などのコストだけが発生することになる。だが、同社としての利益の確保は顧客の判断次第と受け止め、3ヵ月の対応後も、何かと顧客のことを気に掛けるようにしている。
「こちらから強引に営業に行くことはない。ホスピタリティを重視している」

顧客が反応してこないケースも想定されるが、友人関係にも似た無償の対応を重ねるうちに、そういう温かい会社として認知され、ブランディングされるものと信じている。

同社の事業をFacebookやリスティング広告で告知したところ、その反響は予想以上に大きく、当初で約2万5000 円程に設定していたCPA(顧客獲得単価)は、今では約6000 円程度にとどまるほどだ。

また、実際のところ所有物件の管理を同社に委託したり、返済額の減額で生じた資金を元手に、同社から新規物件の購入を自ら検討する顧客も増えて
きている。

もうひとつの新規事業は、転貸・民泊可能物件サイト「ミンコレ&シェアコレ」のメディアの運営である。同サイトを運営していたIT企業からサービスを
買収し、日本で初のアプリケーションも開発した。民泊サイトのアプリ化は日本で初めての取
り組みとなった。

この事業を展開する狙いの一つには、民泊用物件の貸主の物件の管理の受託獲得と、「民泊を始めるユーザーは投資意欲の高い人が多い」(関野)ことを踏まえた投資物件の潜在顧客の開拓であると考える。さらにはサイトのページビュー(PV)の増加により生まれるアプリケーションの広告枠を家電メーカーや家具メーカーなどに提供・販売し、事業法人とのパイプを築いていく方針である。

3.顧客との信頼関係を築き プレミア感を提供し続ける

売上高は設立初年度に1億円を計上、以降、3億円、10億円と伸ばし、今6月期(2017 年6月期)には約30億円を見込むなど、年300%成長のペースで拡大し続けている。何が同社の競争力になっているのだろうか。

「うちのようなベンチャー企業に意思決定してくださったお客様のおかげだ。売上げが伸び続けてきたのは、何かキッカケがあったわけではありません。お客様を弊社の会員組織にしたところ、そこからのご紹介で次々に会員が増えてきた。当社のような事業を展開する場合、ハード面で同業他社と差別化するのは難しい。どの会社でも『うちの物件が一番です』とアピールすることになるわけで、『ハードは他社と変わらない』事実を認めることが大事だと思う」

他方、関野がとくに重視するのがソフトだ。なかでも顧客との人間関係である。
「取引をして下さった方々と友人関係のような気持ちで関係構築を大切にしている。顧客を常に第一に考え、顧客に対してプレミア感を常に提供し続けること。これこそが圧倒的な競争力だ」と関野は述べる。

逆に、そうした相互信頼のできる人間関係を築けそうにない場合には、営業会社では考えられないことだが、自ら契約自体を断わることもあるほどの徹底ぶりである。

最近の事例の中にも、自ら2件の契約案件を断わったケースがある。2件とも依頼者がコンペによる条件争いを仕掛けてきて、関野の考え方を軽く考えていたため「うちは退きますよ」と申し出たのだ。

表面的な条件だけで選ばれた顧客との関係は1回の取引に止まってしまい、その後につながらない。だから粘って追いかける必要はない。そう考えているのだ。

4.社長自ら見極める ホスピタリティの資質

こうした事業展開にあって、関野が最も重視しているのは、何よりも社員である。

「社員を雇った以上は雇用責任があり、社員を守ってあげなければならない。まず何よりも社員を大切に
している。社員を大切にしなければ、社員がお客様を大切にするはずがないからだ。創業して1〜2年は苦しい時期もあったが、社員から『社長といっしょに働きたいから辞めない』という言葉をかけられた。これだ!と。社員を大切にしなければと本気で思うようになった」

現在、社員数は56人。一人ひとりの表情を見れば、好不調を察知できる。関野は、不調な社員には仕事ぶりをほめて心を開かせたうえで悩みを聞く。顧客とのアポイントよりも、社員との面談を優先することも多々ある。

給与水準も高い。社員の平均年齢は30代前半だが、平均年収は1000 万円を超え、28歳で年収2500 万円の事例もあるという。

当然、営業成績次第で減俸ということもあるが、関野はこんな見方をする。1年目に10人の顧客を開し、2年目に新たに10人、3年目にさらに10人を開拓すれば計30人、これに既存顧客からの紹介もある。
「その社員が清く正しく公明正大に仕事をすれば、収入が下がる事態は考えられない」

学生がこの待遇を知れば、間違いなく同社は入社して働いてみたい会社の上位候補になるだろう。
もちろん選考のハードルは高い。4次構成となる選考を通しての最終面接は関野自らが行なうが、履歴書は一切見ないという。

会社の理念・志に心から共感しているか。社会事象に独自の視点を持っているか。ホスピタリティの資質はあるか。面接時の会話から、そうした視点での適性を見極めている。

この厳しい選考をクリアし、昨年(2016 年)は9人、今年(17年)も7人の新卒社員が入社した。来年
(18年)は、3倍の30人の新卒採用を予定している。

2020 年のIPOに向けて顧客と強固な信頼関係を築き続ける、トラスティーパートナーズのさらなる成
長に期待するところ大である。

TO PAGE TOP