うちだまさみの本音でトーク!! IPO社長訪問

うちだまさみの本音でトーク!! IPO社長訪問

Guest Profile

森 雅弘(もり・まさひろ)

株式会社ショーケース・ティービー 代表取締役社長

インタビュー人に寄り添う環境づくりで インターネットの〝おもてなし〞

1.〝入力しやすくする〞分野で 国内トップシェア

日本の文化として世界に知られている「おもてなし」。その「おもてなし」をインターネット上で実現している企業が、ショーケース・ティービーだ。

ネット上で「おもてなし」と言われてもピンとこないかもしれない。インターネット通販が普及しはじめた頃、住所や名前、カード情報など個人情報が入力しづらかったり、スマートフォン(スマホ)時代になって、パソコン(PC)上で見ることができたはずの情報がスマホではうまく表示されず、イライラしたりしたという経験は誰でもあるだろう。

ショーケース・ティービーは、そうした不満を解消するため、入力フォームを最適化するサービスをはじめ、バナー表示やスマホでの見え方など、インターネットに関わるさまざまな事柄を「シンプルに、見やすく、入力しやすくする」ことを目指して事業を展開している。特に〝入力しやすくする〞分野では国内トップシェアを誇る。PCやスマホからの入力作業がここ数年で格段に楽になったのは、同社の技術によるところが大きいのだ。

ショーケース・ティービーの共同創業者の一人である森氏は、大学院修了後、郷里金沢から上京、1988年にリクルートに就職した。通信・コンピュータの新事業部に配属された森氏は、その後、新規事業の開発部署に移り、「92年に初めてインターネットに接続した瞬間に立ち会った。しかし、目の前で起きていることが時代の最先端だという実感もなく、それがもつ無限の可能性を理解できなかった。ただ〝何か〞を感じた」という。

だからこそ、ショーケース・ティービーの前身となる企業を立ち上げたときも、ビジネスの軸はIT、特に「インターネット」だった。しかし、独立した96 年から10年近くは、「インターネット事業だけで食べていくことは難しく、広告代理業やカタログ作成など、お客様が求めることは何でもした。でも、取引先はIT関連企業に絞っていた。そこだけはブレたくなかった」。当時は、シスコシステムやマイクロソフト、IBMなど外資系IT企業が日本でビジネスを拡大していた時期でもあり、これらの企業との付き合いのなかから、ITの技術と可能性、素晴らしさを学んだ。

2.ITに合わせる時代から かゆいところに手が届く時代へ

一般の人たちが日常的にインターネットを使う環境がようやく整ってきた2005年、リクルート時代の同期で、森氏と同じく起業していた永田豊志氏と合流し、ショーケース・ティービーを創業した。「当時、インターネットが普及し始めたものの、決して使いやすいとは言えず、多くの人が無理をして使っていた。人間が道具であるITの方に合わせていた。そのため、インターネットを使いやすく、かゆいところに手が届く、気の利いたサービスを提供したいと考え、事業の中心に据えた」(森氏)

その中で生まれたのが、前述した入力フォームや迷わないための誘導・表示の仕方、スマホでの見え方などを最適化するサービスの数々だった。

「IT が身近になった現在でも、まだまだ人間がIT 側に合わせている。検索方法も入力の仕方も人間の方が飼い慣らされているのが現状。あくまでも人間を主人公として、もっとわかりやすく、もっと使いやすくするために、やるべきことは多い」
 
ショーケース・ティービーはこの6月末、AI(人工知能)広告配信サービス「コグニ・ターゲティング」の提供と、ビッグデータを活用したAIによる分析・研究での滋賀大学との提携を発表した。

「AIは、今日より明日、明日より明後日を自然にさりげなく良くしてくれるテクノロジーだ。当社には、〝どうすればインターネットが使いやすくなるのか〞という膨大なデータがある。これをAIで分析し活用することによって、例えば、Web上に表示される広告も本人が見たいものだけが配信されるようになる。そうなれば、消費者にとっても企業にとってもプラスとなり、〝お
もてなし〞につながるはずだ」
 
さらに「人間と最新テクノロジーが融和することで、人手不足を補い、働き方改革を推し進める可能性も高い」と続けた。

3.東証一部上場企業の末席から ステップアップをスタート

森氏が上場を目指したのは、永田氏と合流し、ショーケース・ティービーを創業してからだ。「どうせやるなら、もっと事業を拡大させたい。同じ考えで働いてくれる仲間も増やしたいという想いが強まった」という。
 
しかし、上場するための準備は、思いのほか大変だった。

「会社の仕組みをつくり、コンプライアンス体制などを徹底させることなど、すべてが手探りだった。失敗もたくさんあった。でも、焦って上場しても、その後にほころびが出たら元も子もない。時間をかけて社員やお客様と良好な関係を築くなど、回り道をしたからこそ、強固な組織をつくることができた」と、当時を振り返る。

森氏は、「なぜルールが必要なのか」や「上場の先に何があるのか」など、自分の想いをまとめた〝解体新書〞を作成し、社員全員に配った。上場を目指す想いについて、社員に本質的な想いを伝えることで、会社の原点や進むべき方向を確認し合い、一緒に進んで行こうという熱い想いを感じることができたという。

15年3月、ついにマザーズに上場を果たす。翌16年12月には東証一部に指定替えとなった。

「いま振り返ると、ビジネスのテーマや技術、お会いするお客様などの幅が確実に広がってきている。これが、会社の今後の力になることは間違いない。上場するために苦労もしたし、守るべきことも増え、外部からの監視も強まったが、出会いのレベルやチャネル、スケールの違いが徐々に社内に浸透し始めている。これがさらなる〝おもてなし〞サービスにつながると確信している」

森氏はこうも語っている。

「社員数もまだ100人に満たない。売上げも会社の規模も、現在、東証一部に上場している企業の中では末席だろう。でも〝おもてなし〞を通じてさらにステップアップしていく土壌は整った。今まさにスタート地点に立ったところだ」
 
現在はスマホなどを通じ、常にインターネットとつながっている時代だ。インターネットを介してできることもますます増えていく。その一方で、急速に進行する高齢化という問題もある。だからこそ、シンプルでわかりやすく、使いやすいインターネット環境がさらに必要になる。その環境づくりに尽力し、いつも私たちに寄り添ってくれているショーケース・ティービーという存在は、その輝きを増していくに違いない。

インタビューを終えて

いつも気さくに、冗談を交えながらお話してくださる森社長。真剣な話の最後にも、相手が笑顔になれる一言を必ずプラスしてくださいます。だからこそ、「インターネットをもっと使いやすくしたい、わかりやすくしたい」という“おもてなし”のサービスが生まれたのだと思います。

今回初めて伺った、上場前に社員に配った「解体新書」の話。そこには、森社長の思いがどんな言葉で綴られていたのでしょうか。ショーケース・ティービーが目指す「人間が機械に合わせなくてもいい世界」が実現したときには、その中身を笑いながら見せてくれるかもしれませんね。

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