うちだまさみの本音でトーク!! IPO社長訪問

うちだまさみの本音でトーク!! IPO社長訪問

Guest Profile

野島 廣司(のじま・ひろし)

株式会社ノジマ 代表取締役社長
事業内容:デジタル家電製品の販売、付帯工事、修理、技術指導
所在地 :神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-3 クイーンズタワーB 26階
設立  :1962年4月
URL   :http://www.nojima.co.jp/

インタビュー「ノルマは一切設けない」方針で社員自らが考えて行動する店づくりへ

1.AVCに専門特化 顧客との信頼関係を築く

野島廣司氏が社長を務めるノジマは神奈川県を地盤に、東京都、千葉県、埼玉県、静岡県などに幅広く店舗展開している家電量販店運営会社だ。

AVC(オーディオ・ビジュアル・コンピュータ)主体のショップを出店したことをきっかけに、他の企業が手がけない”専門性の高い店づくり”を進め、その後もゲーム・音楽などのエンターティメント分野や、通信機器といったコミュニケーション分野を次々に取り組みながら、成長を続けている。

現在、連結で5000名超の社員を抱えるノジマが産声を上げたのは1959年。野島氏の父が脱サラして開業した、いわゆる”町の電器屋さん”だった。経営は順調で、従業員20名以上、年商1億円超へと成長したが、オイルショックなどの影響を受け、急激に悪化。瀕死状態の会社を立て直すために、1973年長男だった野島氏が入社した。当時、従業員も野島氏自身と母を入れてたった4名へと激変していた。

しかし、まだカラーテレビ・クーラー・自動車が『新・三種の神器』としてもてはやされていた時期だ。
「当然、家電業界の規模は右肩上がりで拡大していたが、当時はまだ、家電流通業に絶対的王者がいなかった。シェアトップの企業であっても占有率は5%程度。シェアを分け合う”戦国時代”だったからこそ、攻め方によってはまだまだ上が狙えると、希望は捨てなかった」

そこで野島氏が提案したのが、前述したAVCに特化した専門店だった。「お客様が本当にほしいと思う商品を売る。顧客満足が最優先」と考え、値段は高くても最高の商品を並べ、秋葉原にも見劣りしない商品数を揃えた売り場には、いつしかこだわりを持つお客様が口コミで集まってきた。徹底したサービスがお客様との間に信頼を気付いたのだ。

このとき「安売りだけが商売ではないことを実感した」。これが、いまもなおノジマの従業員の中に引き継がれている経営哲学なのだ。

2.”家業”から”企業”へ 社長就任8か月で店頭公開

ノジマが店頭(現JASDAQ市場)登録したのは、野島氏が社長に就任してわずか8か月後の94年12月のことだ。「家業から企業に変わらなければならない」と考えたことがその理由だった。

野島氏は言う。

「企業には透明性が必要だ。さまざまな企業の不祥事が取り沙汰されるが、これは透明性ないために起きたこと。権限を持つ人がその権限を自分に都合のいいように使ってしまうからだ。家業のままでも儲かっていたが、従業員が働きやすい環境をつくるには、透明性を高めて”パブリックな企業”になる必要があった」

JASDAQは、そんな野島氏の考えに賛同し、なおかつ、成長の可能性を感じたからこそ、8か月という短い期間で店頭公開が実現したのだろう。

しかし、野島氏の型破りな経営方針は、東京証券取引所にはなかなか理解されず、加えて、大型のM&A案件をいくつも抱えていたこともあり、東証上場を目指してからその実現までに、なんと10年もの歳月を費やすことになる。

例えば、ノジマは流通業でありがちな”ノルマ”は一切も受けたことがない。店頭公開を果たした後も、事業計画は各店の部署ごとのリーダーから吸い上げた達成目標をそのまま合計した数字で作成している。あくまで”努力目標”だ。

しかし、「各店は自ら設定した目標を達成するために、その地域に合わせた独自の店づくりをするようになった。自由度の高い運営を各店舗にさせることで、社員は自ら考えて行動するようになった」。それがいまもノジマの強みになっていることを考えれば、野島氏の型にはまらない経営方針があったからこそだ。
「人の成長が、お店の成長へ、ひいては企業の成長となる。だから、前年比100%目標を立てて120%達成した店舗よりも、150%目標を立てて120%で終わってしまった店舗のほうが評価は高い。なぜなら、高い目標に向かって努力するその行動やアイデアが、結果として人を成長させるのだから」

この経営方針を貫きながら、「(東証一部)上場を目指した10年が、ノジマを超ホワイト企業に変えてくれた」と笑う。サービス残業をなくすなど、労務を徹底的に改善し、さらに社員が働きやすい環境づくりを進めることができたからだという。

2017年5月には、業界では初めてDBJ(日本政策投資銀行)から、健康経営格付を取得した。
「次の目標は『働きたい会社ナンバー1』と、目を細めながら話してくれた。

3.世界で戦える ソフトウェア企業をつくる

そんな労務面の改善も奏功し、2016年6月17日、ようやく東京証券取引市場第一部(東証一部)への市場変更が現実のものとなった。

野島氏は野島の未来をどのように考えているのだろうか。
「これからは、ソフトウェアの時代だ。AmazonやUberなど、いま急成長している企業は全てソフトで生きている。これからはさらにソフトが重要な時代になるだろう。それなのに、製造業を主体に成長してきた日本では、ソフトウェア会社が全く育っていない。だからこそ、ノジマ一企業がよくなるためではなく、日本をよくするためにこのソフトウェア業界で戦える企業をつくるべきだ。ノジマは物販からソフトウェアへ形を変えていく」

ノジマは今年(17年)、インターネット接続やココログ、クラウドといったインターネット関連サービスを開発・提供しているニフティを完全子会社化した。そのニフティが持つ130万人超の会員を基盤として、「あらゆるモノがネットでつながる”IoT時代”に、モノを売るだけでなくサービスで新たな収益を稼ぐモデルを確立する」のだという。
「もちろん、物販のノジマの成長がなければ未来を創ることはできない。だから、片足はノジマに置きつつ、片足は未来に置く。ニフティが押さえている家庭とインターネットとの接点を活かして、テレビや白物家電、ゲーム機など家中の電化製品が相互につながれば、一つの回線で家中の電化製品にサービスを提供できる」

ノジマはこれまで、独自の強みを活かして業界でシェアを獲得してきた。しかし、今後は、家電販売にとどまらず、家電をつなぐサービスそのものを提供することを視野に大型買収を踏み切るという。家電量販各社と一線を画して、世界で戦えるソフトウェア企業づくりを目指し、さらなる飛躍を遂げていくのだろう。

インタビューを終えて

ノジマの成功のキーワードの一つに「口コミ」があります。AVC専門店に集まったお客様も口コミ、従業員も「ノジマで働きたい」と口コミで集まってくると言います。実際、私の兄も友人も「家電を買うならノジマ」と決めています(笑)。

また、ノジマは広告宣伝をほとんど行なわず、野球やゴルフなどスポーツの振興にも力を入れています。スポーツ振興は、地域活性化にもなり、顧客獲得にもつながっていることは間違いないでしょう。これもまた形を変えた「口コミ」ですよね。

いつも笑顔で取材に応じて下さる、穏やかなノジマ社長の内側にある緻密な経営理論にはいつも驚かされます。ノジマが、数年後にどのような姿に変わっているのか、今からとても楽しみです。

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