成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社イシダ
代表取締役社長

石田隆英氏

GUEST

Guest Profile

石田隆英(いしだ・たかひで) 

1970年生まれ。明治大学、オレゴン大学卒。1997年イシダ入社。技術本部副本部長、取締役技術本部長、常務取締役を歴任。主に商品開発や品質管理などを担当してきた。取締役副社長を経て、2010年から現職。2007年マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院修了(MBA)。京都経済同友会幹事。

第42回お客様との絆をどんどん深め、当社の機械なしでは生産できないシステムをつくり上げる

1.食品工場やSM対象に計量・包装・検査機器を提供

御社はファミリービジネスとして展開されていますが、何代目になりますか。

私が5代目社長です。今年(2019年)で創業126年になります。創業者の石田音吉は薬局を営み市議会議員も務めていました。1893年1月の「度量衡法」施行で世の中が変わろうとしていたとき、地元の名士ということもあり行政から、はかり製造の依頼を受けました。決して儲かる事業ではありませんでしたが、社会の発展に寄与したいとの思いで依頼を快諾したのが事業の始まりです。

現在、はかり業界はどんな状況でしょうか。

もともと、はかり単体の市場は大きくありません。当社も含め、はかり単体にとどまらず周辺の自動化機器へと事業を広げていった会社が残っています。当社でいえば、計量器から、包装機、検査機(異物混入がないかを調べる)、POS、電子棚札などに事業を拡大しています。
 MBAで学んだ経営戦略に「ファミリアリティ・マトリックス」というものがあります。市場要素(既存顧客か、新規顧客か)と技術要素(既存技術か、新規技術か)の9象限からマーケットを見て、過去のさまざまな企業戦略の成功例、失敗例を学びました。当社では、既存の顧客に新規技術で深く入り込む戦略を採っています。スーパーマーケット(SM)や食品工場を対象に、既存のお客様の要望にお応えしてたくさんの機械を買っていただく事業展開を進めています。長くお取引いただいている既存のお客様はニーズがつかみやすく、企業としてご要望にお応えしお役に立つことができます。海外展開でも同様の戦略を採っています。

そういえば、ある食品工場を見学した際、あらゆる機械が「ISHIDA」製でした。

ありがとうございます。

ところで、京都には御社はじめ、グローバル展開のうまい企業がそろっている気がするのですが、何か理由があるのですか。

京都の企業が、というよりも、グローバル展開をめざす企業が京都にやってくる、という方が当たっている気がします。たとえば、私どもはもともと京都ですが、京セラは鹿児島、オムロンは熊本が発祥です。私個人の考えですが、京都には、京大、同志社、立命館などがあり、学生が多いし、京大は東大と比べ革新的な技術の大学というイメージが強い。海外からも、京都の会社というと、わかりやすいのではないでしょうか。

2.表彰制度を通じて経営理念を浸透させる

なるほど、そういうことですかね。いまは、第4の産業革命といわれ、すべての業界が大きく変わろうとしています。そうした変化に対して御社では、どう取り組まれていますか。

お客様との絆をどんどん深めていこうという戦略を重視しています。まず計量機器の販売から入りますが、お客様のニーズに即した自動化機器類を開発して、顧客満足度を高めていきます。そして、お客様から「パートナー」と認められる存在になると、他社では代替できない「システム・ロックイン」状態になります。国内ではこの状態をつくれるようになってきましたが、海外では、まだまだ第2の段階ですが、中国でも、インドでも、われわれのマーケットが大きくなっているのを感じています。

2010年に先代から事業を承継されました。いまも変わらず、受け継いでいるものはありますか。

承継時に「三方良し」(自分良し、相手良し、第三者良し)の経営理念だけは変えるなと言われました。ただ125年も事業をやっていると、言葉は同じでも、創業者と先代とではまったく同じ価値観ではないし、社員と共有できているものと同じとは限らない。そこで社長就任時に、当社の目指すべき姿、経営理念、行動規範の内容を再定義し、分かりやすい言葉でまとめ直し全社で共有しました。

御社グループの従業員数は3000名を超えていらっしゃいます。それだけの従業員にどうやって経営理念を伝えていますか。

「(全社)表彰制度」を通して理解と浸透を図っています。同制度は、全社員が改めて理念と行動規範を考え、理念の良き実践者に投票するものです。たとえば、行動規範「三現主義」を体現する社員がいれば、仲間が推薦コメントを書いて投票します。投票結果を集計し、優秀実践者は社長表彰します。さらに全コメントを手紙にして実践者に届けます。各個人へのコメントは励みになっています。「何かあると現場にすぐ駆けつけてくれるので、助かっています」といった仲間からの温かいコメントが届けられ、「うれしい」という声がたくさんあがっています。また、コメントは仲間同士がお互いの良いところを認め合う風土を作るのにも役立っています。

3.働きがいアップをめざし働き方改革に取り組む

4月以降、働き方改革関連法が順次施行されますが、働き方改革については、どのように取り組まれていますか。

当社のなかでは第2のフェーズに入ったと考えています。第1のフェーズは「早く帰る」「休日出勤をなくす」といった労働時間に特化したものですが、これだけでは社員の働きがいはアップしません。そこで第2のフェーズとしては「やっている仕事が楽しい」「仲間といっしょに喜べる」という環境づくりを考えており、社員にアンケートを取るなどして、改善を進めているところです。

当社でも、残業を減らすことだけが、働き方改革のめざすところではないという考えから、社内で「ネオワークス」と呼ぶ、新しい働き方改革を進めています。自分の仕事をマネジメントや研究開発といった非定型の仕事と、ルーティン作業のような定型のものとに分け、定型業務は外部の人に任せるようにして、社員は非定型の仕事しかしないという方向に変えていこうと。5年計画くらいで実現できればと考えています。

そうなんですか。実は、いま社内で「役職定年後の働き方をどうするか」「ベテラン社員のモチベーション維持をどうしたらいいのか」ということが大きな悩みとしてあがっています。60歳定年であれば、55歳役職定年制でちょうどよかったのですが、定年延長により10年はがんばってもらわなければなりません。

ジャストアイディアですが、思い切って、彼らにワークライフバランスの最先端を行ってもらうのがいいんじゃないですか。たとえばいまの通信環境を利用すれば、週3日から4日の勤務、在宅勤務、田舎暮らしなどでも、十分な働きができる。若い人たちに、55歳になると、こういう働き方もあるよ、と提案するにはいいチャンスかも。

ありがたいヒントをいただきました。いいモデルをつくってみたいですね。

楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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