成長の秘策ゴチになります!

HOST

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長

白石 徳生氏

株式会社ジャパネットホールディングス
代表取締役社長

髙田 旭人氏

GUEST

Guest Profile

髙田 旭人(たかた・あきと)

1979年長崎生まれ。東京大学卒業後、証券会社を経て、2004年にジャパネットたかた社長室着任。販売推進統括本部、商品開発促進本部の本部長などを歴任し、12年にジャパネットたかた取締役に就任。15年1月よりジャパネットグループ数社の代表取締役社長に就任、現在に至る。

第33回「ついてこい」の文化から「自分の意志で動く」組織へ転換

1.いまも経営者としての軸にある49日間営業停止時の対応

髙田さんは前社長のご長男ですが、東京大学を卒業され大手証券会社に入社されました。

将来はジャパネットたかたで頑張りたいと思っていましたが、その前に別の会社を経験しようと考えました。入社に際しては一番きつい営業を自分から希望し、首都圏の住宅街にある支店に配属されました。

その時に学んだことはどんなことですか。

「常に自分で考える」ということですかね。営業初日に何かしら教えてもらえると思っていたのですが、名刺を渡され「お客様の名刺を100枚集めてこい」と送り出されました。最初の一ヶ月間は「名刺を何枚集めたか」、それから先は「お客様からいくらお預かりしたか」が全支店ベースでランキングされるのでシビアです。成績を残している同期や先輩に聞いて歩いて情報収集し、自分で考えて動かないとやっていけません。それでも新人の私しに大きな額を預けて下さるお客様もいらっしゃいましたから、信頼を裏切らないためにも一生懸命でした。

証券会社の中で管理手法として学ばれたことはありましたか。

管理職が若手の意志をサポートしていく姿勢はすごく感じましたね。弊社は父が創業者として長年引っ張ってきて、社員はそれについていくことに慣れていました。自分で意志を持って何かをやるのが苦手なメンバーが多かったんですね。以前の会社では自分で意志を持って取り組まなければ評価されません。弊社ではそれを少し柔らかくした形で、社員一人ひとりが意志を持って動くような仕組みを取り入れてきました。

なるほど。御社への入社はどのようなタイミングでしたか。

証券会社退職後は米国に留学していました。ところが2004年に弊社で個人情報の流出事件が起こり、帰国してその対処を手伝っているうちに向こうに戻れなくなり、気付いたら入社していました。

その件はマスコミでも大きく報道されましたね。

49日間営業を停止しました。間近で父のお客様に対するお詫び、取引先様や社員への対応を見ていて、いまでもその時のことは経営者としての私の軸にあります。「犯人や流出経路がハッキリしない状態で商売を続けることはできない」と、事件の概要が明らかになるまでは販売を自粛することを父は決断しました。記者会見も、メディアからの要望に応じて、午前と午後の2回開き、終了時間を区切らず最後の質問まで全てに答えていました。

2.マスコミ報道で知った突然の経営者交代

入社後はどんな部門を担当されましたか。

社長室、バイヤー、メディアまわりなど、父の近くで仕事を受け持った後、親の側から離れて勝負しようと福岡に異動して7年間コールセンターと物流を担当しました。

弊社もコールセンターを持っていますが、センター長によって生産性、顧客満足度が左右されるんですよね。コールセンターに7年間いらして、どう変わりましたか。

生産性でいえば、4、5倍にはできたのかなという感覚はあります。電話をとるだけのコールセンターから、お客様窓口に変わったという実感はありました。

そこでは何を一番意識しましたか。

誤解を恐れずに言えば「お客様は神様ではない」ということです。常にお客様が正しいとすると社員の士気が下がってしまいます。「あまりに無茶をいう方がいれば、最後は会社が守ります」というメッセージは出していました。

東京に来られたのはいつごろですか。

家電エコポイントの時(2009年5月から11年3月末まで)には売上げが1759億円まで伸びました。ところがその後の反動で落ち込んでしまい、そのタイミングでバイヤーに戻りました。その頃父がある取材で「来年、最高益にできなければ会社を辞める」とコメントしたのを知り、驚きました。その年は、全社一丸となって最高益を達成できましたが、それでも父は「あと2年でやめる」と言い出し、その半年後には「今年で辞めます」と宣言して、現在に至っているんです。

そうでしたね。髙田前社長の引き際は見事でした。

当時は大変でした(笑)。

先代社長は何故そんなに引退を急がれたのでしょう。

父自身も、社員が自分に依存している状況を変えたいと思っていたのだと思います。私が入社してからずっと社員に「自分の意志を持って動け」と言い続けており、それが実現しつつあるのを見て、後継者として納得したのではないでしょうか。

3.家族的な雰囲気と徹底的なお客様目線

先代時代から変えていないところはありますか。

家族的な雰囲気と徹底的なお客様目線です。商品やその周辺のサービスが主役でなければダメです。社長自身が商談をやるのも変わっていません。父は直感で選んでいましたが、私は仕組みの中で間違いないとなれば一気にいきます。父とアプローチは違いますが、目指すものは一緒です。

御社のような通販の場合、商品の良さが消費者に伝わりにくいということもあると思うのですが。

父はスペックばかり説明してもダメで、その商品があると「何が変わるのか」を伝えることが重要だと言っていました。7月に第一種旅行業を取得し、新たにクルーズ旅行の販売を始めましたが、そこでは、ツアー期間中に生まれるコミュニティもお客様にとっては楽しみの一つですから、その”コト”としての魅力をアピールしています。

アマゾンや楽天市場は意識されますか。

弊社はジャパネットならではの目利きをして魅力的な商品を絞り込んで販売します。それに対し、アマゾンさんや楽天市場さんの場合、数ある品揃えの中から、お客様が自分で選んで購入するので競合しないと思っています。「選ぶのは面倒くさいけど良いものがほしい」という方が弊社を選んでくださるのかなと考えています。

人の評価についてはどうですか。

最近は成果に対する評価を加味するシステムがようやくかたちになってきました。社員もそれを意識してくれるようになり、人材の質という面でも着実に変わり始めています。

先代が築かれた人に対し優しい文化と、髙田さんが自身で経験し持ち込まれた新しい価値観とが、うまく化学反応を起こし始めているようですね。今日はありがとうございました。

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