株式会社セントラルプロフィックス 田畠 義之

Guest Profile

田畠 義之(たばた・よしゆき)

1965年生まれ。88年3月、立教大学卒業。92年7月セントラル・プロセス社(現・セントラルプロフィックス)入社。97年5月常務取締役、2001年5月に代表取締役社長となる。

特集強みの磨き上げ+積極投資で印刷分野のワンストップソリューションをめざす

1.画像処理、品質管理は 印刷業界屈指

この25年の間に、あらゆる業界でアナログからデジタルへの変化が一気に進んだ。なかでも印刷業界は、インターネットの普及による紙からWebへの移行もあり、その負の影響を大きく受けた。ピーク時に約9兆円あった印刷業界売上げは、現在、約5兆円にまで落ち込んだといわれている。
 しかしその印刷業界にあって、売上げ30億円規模ながらも、2008年のリーマンショック以降、売上げ、利益を順調に伸ばし続けている元気企業がある。1950年設立のセントラルプロフィックスだ。
 2001年から同社社長を務める田畠義之は「全体では厳しい業界だが、個別に見ていけば、魅力的な企業であれば、まだまだチャンスはある」と、さらなる成長に自信をのぞかせる。
 セントラルプロフィックスの強みは、なんといっても、業界屈指の画像処理技術や品質管理、都心にありながらも24時間対応が可能という点だ。もともとは製版をメイン事業としていたが、DTP化が主流になるのに合わせ、企画・デザイン、印刷、Web、画像処理など事業領域を拡大してきた。3Dトリックアートプリントやデジタル金箔加工といった最先端分野への設備投資にも積極的だ。
 従来、細かな色表現を要求される化粧品や自動車などの交通広告、新聞広告を中心に展開していたが、その印刷品質に対する信頼感もあり、カタログ、店頭ポスター、販促用ノベルティなどの制作依頼を受ける機会も増えてきている。

2.賞与の完全成果主義が 社員のやる気を高める

働き方改革が声高に叫ばれる一方で、労働現場では人手不足が日々、深刻さを増している。同社が強みとする24時間対応は敬遠されやすい働き方だ。しかし、現在、同社の社員は160名ほどで、年々増加している。上は75歳の人から、幅広い世代が活躍しており、離職率も低い。
「24時間対応が社員にとって負荷になるのはわかっている。それでもこの業界で伸びていくには必要なサービスだ。そのことを理解してもらったうえで、社員に対する経済的な還元を心がけている」
 そのために行なっていることのひとつが、社員に対し会社の業績をガラス張りにすることだ。貸借対照表や損益計算書を明らかにし、売上げ、利益がどうなっているのか、さらに昇給や賞与の原資がどのくらいあるのかも、社員にわかるように説明している。
 社員のモチベーションを高めるインセンティブになっているのが、賞与の査定方式だ。
「給与は成果に対してより、残業時間に比例する部分が大きいが、賞与については完全成果主義。0%から200%の開きがあるが、導入して以来、社員のやる気が変化してきた。いい仕事をした社員に、正比例にて賞与を支払うのは、非常に重要な要素だと思う」
 ちなみに同社には労働組合があり、24時間対応も、賞与の全額査定も、事前に労使で折衝していることで、不平不満の解消に注力している。
 福利厚生面については公平分配が基本の考え方だ。全員が同じように便益を得られるものを制度に取り入れている。また中小企業の多くで導入が進む福利厚生サービスの活用もスタートさせた。「若い人はうまく利用しているようだ」(同)という。

3.足踏み状態を脱し 再成長軌道へ

リーマンショック以降は、右肩上がりで業績を拡大してきたセントラルプロフィックスだったが、17年度決算では前年実績を下回る結果になった。
「原因は事業構造の変化だ。いろいろとあるが、たとえば毎回、色調確認のため印刷機による試し刷りを要求されていた新聞広告が、試し刷りのデジタルプリンターへの移行により簡便となり、当社で受注できなくなってしまった。当社の試し刷り技術のニーズが減少し、売上げを落とすことになった」
 今後も、同じような技術革新により、同社のビジネスを縮小させる可能性は十分にある。たとえば広告媒体としてデジタルサイネージが定着すれば、印刷物による電車やバスでの交通広告は不要になってしまうだろう。
 もちろん、同社ではそうした変化への対応にも怠りはない。
 最先端の印刷機器への積極的な投資はその一面で、まだ国内に数台しかない最先端機器の導入は、会社としての広告宣伝にもつながるうえ、実際の営業効果も生まれてきている。
「当社Webサイトでは、最先端機器による製品群や3Dトリックアートプリント等も紹介しているが、毎日のように問合せが入る。そこから、直接、仕事につながるケースも増えている」
 しかしながら、セントラルプロフィックスが、今後、最先端機器に走っていくのかといえば、田畠は明確に「No!」と答える。
「当社の最大の強みは、あくまでも従来の製版・印刷における高品質とスピード対応。先端機器への投資と並行して、この分野を徹底的に深化させていく。これからも、本来の強みを磨き続け、その分野での圧倒的存在をめざしたい」
 18年度決算では、再び、前年の売上げ実績を上回ることができそうである。売上げの足踏み状態をわずか1年で脱し、19年度以降はまた以前のような上昇軌道に戻ることが見込まれている。
「厳しい環境に置かれている業界だから、足踏み状態が何年も続くと、社員の頭の中には将来への不安が生まれる。その意味で、短期間で上昇軌道に戻せたのは大きい」
 高品質とスピード対応に裏打ちされた圧倒的な印刷技術で、従来の印刷物から最先端のデジタル分野にまで対応する印刷分野のワンストップソリューション企業として、セントラルプロフィックスはさらなる成長への道を歩み始めている。

TO PAGE TOP