株式会社ブランドコントロール 井原 正隆

Guest Profile

井原 正隆( いはら・まさたか) 

株式会社ブランドコントロール 代表取締役    事業内容:ブランドコントロール、ブランドガード、ブランドリフティング    所在地:東京都港区赤坂4-15-1 赤坂ガーデンシティ15F    設立:2013年10月    URL:http://www.brandcontrol.co.jp/      1982 年生まれ。米南カリフォルニア大(USC)医卒。在学中にモバイルゲーム会社を仲間と起業。大手ゲーム会社に売却後、2006 年アクセンチュアでITコンサルティング業務。08 年ORM(オンライン・レピュテーション・マネジメント)会社を設立、13 年ブランドコントロールを設立し、現職。

特集ORM手法とネットゲーマーの発想を強みに企業のブランドマネジメントに効果をあげる

1.ネット風評被害対策は法的手段が有効とは限らない

ネット上で根も葉もないネガティブ情報を流し、企業の信用を失墜させたり、個人の名誉を傷つけたりすることは違法行為で、犯人は民事上、刑事上の責任を負う。

そうしたことから、日本のビジネスの世界では、ネット上の風評被害に対して、被害者が法的手段に訴えるということも少なくない。「しかし、弁護士を通じて講じる法的手段がベストの解決策かといえばそうとは限らない。かえって被害を悪化させてしまうこともある」

現実世界とネットの世界での情報の扱い方の違いを熟知する、ブランドコントロール社長の井原正隆はこう語る。同社は2013年、企業のブランド価値を守るITサービスを提供する会社として設立された。

「ネット上の悪質なネガティブ情報の投稿に対して、弁護士を通じてプロバイダーなどに削除手続きを行なうのが一般的になっている。ところが、投稿者がとくに企業に怨恨や反感を抱いている場合、逆上して誹謗中傷がエスカレートすることもある。最近ではSNSを活用するなど、情報拡散の手口も巧妙化しており、犯人を特定するのが難しいばかりか、十分な手が打てない間に、企業が回復不能な損害を蒙ることもある」

2.ORMベースの手法で対策の有効性は 80 %以上

そうした時代に先んじて、同社が取り組んできたのが、ネット検索の仕組みを逆手に取ったレピュテーション(世評)対策だ。「ネガティブ情報をネット上から完全に消すのは難しいが、検索されなければ、風評被害を受けにくくなる」

具体的には、口コミサイトに依頼主に関する客観・中立的な情報を書き込む、ポジティブな検索キーワードを上位に表示させる、依頼主のポジティブ情報を載せたサイトを立ち上げて検索ランキング上位に押し上げるといった手立てを講じ、ネガティブ情報を相対的に見つかりにくくするのだ。

一見すると、日本国内でもポピュラーになりつるある逆SEOのイメージだが、同社サービスが基盤とするORM(オンライン・レピュテーション・マネジメント)は、そもそも金融・政治・軍事をバックグラウンドに米国で開発されたもので、20年以上のノウハウと最新のテクノロジーに裏打ちされているという点で大きく異なる。

同社ではこのORMをベースに、検索エンジンのアルゴリズムをエビデンスに基づいて解析しており、ネット上のリスクマネジメントの有効性は実に80〜90%に達する。

井原がリスクマネジメントのITサービスを思いついたのは、学生時代にネットゲームのベンチャーを立ち上げたことがきっかけだった。

「医師だった父親の勧めで医学部(南カリフォルニア大学医学部)に入ったが、実は、情報工学や法学、経営学のほうに関心があり、ITビジネスにのめり込んでしまった。そんな生活を送る中で、私はネットの〝悪い情報〞も、〝良い情報〞と同じくらいの経済的価値があると気づいた。ネットゲームの世界でネットワークを構築していたこともあり、ネットゲーマーたちの柔軟な発想で多角的にアプローチしていけば、ブランドマネジメントの実効性が高まるのではないかとも考えていた」

3.PR大手の傘下入りで新規事業展開に弾み

日本に帰国後、アクセンチュアを経てITベンチャーを設立。そのタイミングで井原は日本市場における風評被害対策のニーズに応えるため、ブランドセキュリティのサービス提供を開始。17年12月にPR大手のベクトルから70%の出資を受け、同社の傘下に入った。「ブランドセキュリティのシステムについては、95点まで完成したので、次の事業フェーズを模索していたところでした。自前で客層を拡大する方法もありましたが、大手企業の既存の事業基盤を活用し、新たなシステムの開発に磨きをかけるほうがいいと判断しました。ベクトル社も、依頼主からのニーズもあり、リスクマネジメント部門の強化を図っていました」

ベクトルグループの一員となったことで、すでにさまざまな恩恵を享受できているという。「グループは、実績のあるPR会社を30社以上、『PR TIMES』などの有力なネットメディアも多数抱えています。こうしたネットワークを活用して、『ブランドセキュリティ』だけでなく、ブランド価値を高める『ブランドリフティング』も効果的に行なえるようになりました。グループ内で共有しているリソースを使えば、新たなリスクマネジメント事業も展開できます。東証一部企業グループとして信用が高まったことで、依頼が急増し、1件当たりの受注高も大幅に増えました」

井原はグループ入り後、IPOも視野に入れるようになったと明かす。資金調達というよりも、企業の信用力を高めて、事業をグローバル化する狙いのほうが大きいという。すでにマレーシアなどで公的機関のリスクマネジメント事業に参画しているが、今後はさらなる国際展開にも力を注ぐ。「新たな展開としては、ビッグデータとAI(人工知能)を使ってネガティブ、ポジティブの両面から社会での企業イメージを総合解析し、エビデンスのあるブランディングを自動化するITサービスを構想中」と、井原は意気込みを見せている。

TO PAGE TOP