株式会社フィード 中村 建治

Guest Profile

中村 建治(なかむら・けんじ)

1972年京都府生まれ。専門学校卒業後、大手宝飾品販売会社に入社。 わずか3カ月でトップセールスマンになり、10年後に取締役常務に就任。 2007年に株式会社フィードを創業。 11年に不動産業界に進出し、「シングル層」に向けたコンパクトマンション事業を 展開し、不動産業界参入後わずか5年で、グループ全体で100億円に届く売上げに拡大させた風雲児。

特集ラグジュアリーブランドとのコラボ戦略を皮切りに「コンセプトブランディングマンション」を定着させる

1.独自のマーケティングで シングル層向け市場に参入

黒を基調にしたシックなリビングルームには最新のシアターシステム、水素水栓を搭載したモダンなキッチン、バスルームは人工炭酸泉バスを完備……。フィードが手がけるシングル向けのラグジュアリーマンション『EXLUX』が好調だ。
 
同社は2007年設立、不動産事業に参入して6〜7年目のベンチャーながら、年間200〜250戸を販売、グループ売上高は約100億円に迫る。その躍進を支えるのが、独自のマーケティング戦略だ。
 
マンションの購入といえば、ファミリー向けの3LDK(70㎡以上)というのが一般的。実際、大手をはじめ多くの不動産デベロッパーが同市場に参入している。ところが、フィードの戦略は異なる。
主力ターゲットは首都圏に住む20〜40代のシングル層世帯で、間取りは40〜50㎡の1LDKだ。代表の中村建治は次のように説明する。
「東京都の家族類型別世帯数で最も多いのがシングル世帯。全体の5割近くを占めており、今後も晩婚化などでシングル世帯は増える見通しです。
首都圏でみた場合、20〜39歳のシングル層の人口は約192万人。そのうち住宅ローンが組める目安の年収400万円以上の人が約60%。つまり、120万人くらいの人が当社のターゲット層になります」
 
マンション市場は、ファミリータイプは高価格帯から中・低価格帯に大手企業がひしめく一方、シングル向けはほぼ空白地帯になっている。
「いま東京23区のワンルームマンションの家賃の平均は約8万円です。
3000万円の住宅ローンを35年払いで組んでも月々の支払いは少し高くなる程度。
ほぼ同じ金額で倍の広さの部屋に住め、ローンが終われば完全に自分の不動産になる。そうご説明すると関心を示される人が多いです」実際、同社のマンションは売れ行き好調だ。

不動産事業参入初年度の12年には30億円以上を売り上げた。
翌13年には50億円を突破、17年7月期の売上高は70億円と顕著な成長を見せている。

2.不動産事業への参入は 東日本大震災がきっかけ

震災当時、中村は横浜に居住を置いていた。 
当時のフィードは5期目を迎えており、主となる事業はエステサロンやネイルサロン、アクセサリー等の販売業務を主としていた。「お客様には、商品・サービスを通じて幸せになっていだく」、そんな想いで商売をしていた。
そうした中での東日本大震災だった。
「従業員と何度も被災地へ足を運びボランティア活動をしていた際に、『家』という名の帰る場所がない方の悲愴で失望されてらっしゃる姿を目の当たりにし、『家』って本当に大切な場所であると実感した」(中村氏)という。
この経験から意識が強く変わり、「戸建てであれ、分譲マンションであれ、賃貸マンションであれ、帰れる場所のある『当たり前』を、仕事にしたい」と考えるようになった。
 
そこで中村はそれまで行なっていた事業のすべてを廃止して、不動産販売業者、ひいてはマンションデペロッパーになりたいと従業員たちと決意した。
しかし、正直、不動産業は門外漢。
何の経験もなく、業界のことは何ひとつ知らなかったというが、「営業には絶対の自信がある。売れる商品をつくるためのマーケティングをしっかりすれば何とかなる」(同)という信念で、見事に不動産事業を軌道に乗せた。

3.「 Hennessy 」との タイアップから生まれた 『EXLUX』

さらなる飛躍に向け、いま力を入れているのがブランド力の強化だ。
マンションデベロッパーとして新参者のフィードは、大手デベロッパーに近づくため、顧客からの信頼を獲得することが非常に重要と苦悩していた。
そこで、従来の常識に縛られない発想を持つ中村は、短期間でブランド力を付けマーケットに認知させる方法として、初めから認知度の高いブランドとタイアップすることで信頼度を獲得できると見込んだのだ。

野村の『プラウド』、東京建物の『ブリリア』のような大手が費やした何年もの歳月と広告宣伝費を圧縮するために、我々後発のマンションデベロッパーであるFIDOができることは何なのだろうと考えた際に、有名ブランドとのコラボすることに目を向けました」
そこで中村がとったのが、有名ブランドとのコラボという手法だ。
最初に組んだのがLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)。
フランス・パリに拠点を置き、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなど70もの有名ブランドを有する世界トップの高級ブランドグループである。
その中でも世界有数のワイン&スピリッツを扱い、社名にも掲げる「Hennessy」と16年にコラボレーションを果した。
こうして誕生したのが、冒頭で紹介した『EXLUX』だが、居住空間に置けるフィードならではの方程式が「趣味+健康+美容」×ブランドだ。
 
この「Hennessy」とのコラボレーションの成功を受け、中村は今後、他のラグジュアリーブランドとも手を組み、これまでのマンションデベロッパーが着目していなかった、〝ブランドマンション〞という新たなレゾンデートル(存在理由)を強く示していく方針だ。
 
また、ホテルとのコラボレーションも展開していく計画だ。
たとえば、スターウッドホテル&リゾートセントレジスニューヨークには、世界で唯一ティファニーや、クリスチャン・ディオールが手がけるスイートルームがあるという。
「これをビジネスモデルにし、都内の最高級ホテルに高級ブランドとコラボしたモデルルームをつくりたいと考えています。
スイートルームの宿泊客の大半は外国人です。2020年政府目標では、15年から2倍の4000万人の外国人旅行者を目指し、ますますインバウンド需要が増えるなか、外国人が東京にセカンドハウスを持ちたい、投資用マンションがほしいというニーズが高まっており、スイートルームをモデルルームとして活用し、マンション販売につなげる考えです。すでに複数のホテルと業務提携の話が進んでいます」
 
一方、華やかなラグジュアリーブランドとのコラボだけではなく、地方自治体と手を組み、高齢者に向けた安心・安全なマンションも計画中だ。
「さまざまな方々、いろいろな街のニーズに対応できるマンション。それが当社で考える〝コンセプトブランディングマンション〞の姿です」と中村は将来をしっかりと見据える。
 
好調なマンション販売を背景に、2021年のIPO(新規株式公開)を念頭に置く。
その日が来るまでに、数多くの有名ブランドとのコラボを手がけ、「コンセプトブランディングマンション=フィード」という会社の基盤を着実に固め、長期事業計画においては、保険、ブライダル、アパレル、介護など、マンション購入者に付随するさまざまなサービスを提供する「不動産総合商社」を目論んでいる。
「われわれの夢を実現するためにも、チャレンジ精神旺盛な人材がほしい。新しいことにどんどん挑戦できる環境なので、やりがいがあり、おもしろいと思います」

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