株式会社ビジョン 佐野健一

Guest Profile

佐野健一(さの・けんいち)

1969年鹿児島県生まれ。90年株式会社光通信に入社、すぐにトップ営業マンになる。当時の全ての部署の責任者を担当する。95年富士市に有限会社ビジョン設立(96年株式会社ビジョンへと改組)。2010年本店を東京都新宿区に移転。15年東京証券取引所マザーズ上場、16年東京証券取引所市場第一部へ市場変更

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1.社員の平均年収は 2年で60万円アップ

情報通信機器・システム販売会社の正社員離職率が年平均20%超とも言われるが、社員数が約390人のビジョンでは、9.5%にとどまっている。離職防止策について社長の佐野健一に尋ねると、すかざず「そもそも辞める理由がない」と明言してきた。 「商品が売れ続けて、お客様に喜ばれ、追加オーダーをいただける。給料も増えている。この2年で社員の平均年収は60万円アップしている」

まず業績を概観しておきたい。ビジョンは2015年12月に東証マザーズに上場し、16年12月に東証一部に市場変更した。16年12月期の年間売上高は前期比18・9%増の148億4300万円。営業利益と経常利益は大幅に増加し、それぞれ60・3%増の12億9000万円、60・8%増の12億9800万円。17年12月期には売上高167億1300万円(12・6%増)、営業利益16億600万円(24・5%増)、経常利益16億800万円(23・9%増)を見込んでいる。

事業内容は、主に情報通信機器・システムの販売とアウトバウンド客とインバウンド客へのWiFiレンタルの2分野である。大幅な利益増の要因は「両事業ともに、需要を見込める顧客の基盤をプラットフォーム化し、アップセルやクロスセルによって、商品とサービスを積み上げるというストックビジネスの構造ができ上がっていること」。需要を見込める顧客とは、例えば伸び代の大きい新設法人だ。新設法人は成長に従って情報通信機器・システムの利用が拡大する。

2.質+低価格販売を実現した 「チームビジョン」組織

法務省によると、16年の全国法人登記件数は11万4343件。毎年ビジョンが新規取引する新設法人は1万8000社超だから、新設法人6社に1社と取り引きしている計算になる。新設法人の中から、いかにして成長力を発揮できそうな営業先を発掘するのか。

同社は「ビジフォン・ドットコム」「コピー機ドットコム」などのWEBサイトを運営しているが、単に集客だけでなく、優良顧客の囲い込みにもつなげている。「サイトにアクセスしてくる会社はコストを意識しているので、当然、成功の可能性も高い。例えば1人や3人で創業して3カ月後に10人、半年後に社員30人、1年後には50人に発展するような会社が多い。おのずと通信機器の設置数も増えて、リピーターになっていく」

だが、これだけなら多くの同業者も取り組んでいる。ビジョンの特徴は顧客ごとにコンシェルジュを配置して、ホームページ製作、営業、アフターフォローの全てに対応できる上に、低価格で販売できる構造の確立にある。これを可能にしたのが「チームビジョン」と呼ぶ組織体制だ。各事業部は売上を競う競争関係でなく、顧客を紹介しあう協力関係に編成されている。

紹介は「エスカレーション」と呼ばれ、電話機の担当事業部がコピー機の受注を担当事業部に紹介するという仕組みで運用されている。この仕組みが取引獲得コストを削減し、低価格販売を実現させたのである。
さらに成約件数も飛躍的にアップさせた。コピー機を例に取れば、1カ月4台を販売すれば上出来と評価される業界相場に対して、ビジョンの営業担当者は1カ月平均16台を販売する。極端な話、1台当たりの粗利益が業界平均の半額でも、粗利益総額は2倍に達するのだ。

3.経営には定型なし 経営は自由でよい

チームビジョンの土台になっているのが、自立と改善の文化である。佐野はこう考えている。「社員には『自ら学ぶ姿勢を持ってください』と言い続け、自立を促している。さらにモチベーションを向上させるため、社員がブレイクスルーできるような配置転換をして、背中を押している。改善はミッションやビジョンよりも大切だと考えている。問題点を改善すれば数字に反映され、社員は自信をつけ、中長期計画も具体化しやすくなる」

こうした経営手法の実践に至ったキッカケは「経営は自由でよいと気づいたこと」。気づきを得た場はEO(Entrepreneurs' Organization)である。EOは年商1億円以上の創業経営者に限定した48カ国・150支部に及ぶネットワーク組織。佐野は1999年に入会し、のちに日本支部の第14代会長にも就任する。

「それまでは、経営とはこうあるべきだという定型化された概念を持っていた。ところがEOメンバーは皆それぞれのスタイルで成長を続けている。成長する経営者の実像を見ているうちに、経営のやり方は自由でよいと気づいた」

自由の尊重は人材育成にも踏襲し、佐野の成功体験を社員に追随させることは厳に慎んでいる。「私の成功体験は過去の時代の体験であり、私に特化した体験だ。社員に押し付けるようなことをしたら、可能性を潰しかねない」。

社員を型にはめないことも、離職率が低い要因だろう。物心両面で職業人としての尊厳が保たれる環境ほど、社員の意欲を駆り立てるものはない。

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