株式会社エボラブルアジア 吉村英毅

Guest Profile

吉村英毅(よしむら・ひでき)

業務内容●オフショア開発、オンライン旅行代理業 設 立●2007年5月 資本金●2億1500万円 売上高●153億7000万円(2014年9月期実績) 200億円(2015年9月期見込み) 社員数●606名(連結子会社含む)*2015年8月現在 所在地●東京都港区芝3-5-5 芝公園ビル6F 電 話●03-3455-0836 URL●http://www.evolableasia.com/

特集コスト削減、業務の軽減、内部統制強化を実現 出張手続きのクラウドサービス

1.国内航空券取扱高は国内OTAナンバー1

 2013年に「旅キャピタル」から社名を変更したエボラブル アジアの成長の勢いが止まらない。11年9月期に100億円を突破した年商は、右肩上がりで増え続け、15年9月期には200億円に達する見込みだ。

 インバウンド需要の追い風を受けたのではない。同社の主力事業のひとつである「OTA(オンライン旅行代理店)/比較メディア事業」は、国内航空券取扱高が国内OTAナンバー1の地位にある。何がその原動力になったのだろうか。執行役員・旅行営業部GMの増田武が挙げるのは先行者利益である。

「07年に旅キャピタルが創業される前から、その前身となった会社ですでにオンライン旅行事業を手掛けていた。国内線OTAを手掛ける会社はまだなく、OTA市場の先駆者としていち早くノウハウを蓄積できたことが大きい。航空券手配には煩瑣な手続きが発生するが、当社は業務フローを確立してシステムの精度を高めてきた」

 システム開発力もOTA市場での圧倒的競争力を支えている。本誌20号で掲載したように、同社では極めてスキルの高いエンジニアを揃えてオフショア開発事業を推進しているが、もともとはOTA事業のシステム開発部隊として生まれたものだ。

 これらの強みを背景に同社は、BtoCサービスとBtoBサービスの2つの領域でOTA事業を展開している。

2.「旅Pro-BTM」導入企業は年間100社ペースで増加

 BtoCサービスではLCC全4社を含む国内の全14キャリアと国際線、さらに国内外3万軒以上の宿泊施設などの横断検索・比較や手配が可能な自社直営サイト「TRIPSTAR」「エアーズゲート」「空旅.com」「旅WEB」を運営する。就航路線数や便数の増加で、今後の伸びしろの大きいLCC4社とスカイマークは認可代理店契約を締結した。

 一方、BtoBサービスでは主に3つの事業に取り組んでいる。出張時の航空券や宿泊施設などの社内手続きをクラウドサービス「旅Pro-BTM」で一括提供するビジネストラベルマネジメント(BTM)、OEMで585社(15年8月時点)に旅行コンテンツを提供、国内航空券を旅行代理店に販売するホールセールの3事業である。

 このうちOEMは「H・I・S・」「ASKUL」「DeNA TRAVEL」「JCB」「JALPAK」など「国内の主要な旅行サイトにはほとんどコンテンツを提供している」(増田)という。訪日旅行需要の開拓に向けて、4カ国語対応の国内航空券予約サービスも運営を開始しており、今後BtoB向けの展開も視野に入れている。

 BTM事業は今後の成長が期待される分野。法人営業部BTM営業グループ長の下平美保は「BTM事業の立ち上げは11年。導入社数は年間100社ペースで増え続け、直近の取扱高は前年対比50%増となった」とBTM事業の成長を振り返る。

3.出張費の削減効果は年間10~15%の実績

 オンラインによる出張手続きサポートサービスを提供するのは同社だけに限らない。しかし通常、同様のシステムを導入する場合には初期投資やランニングコスト、保証料などさまざまなコストが発生するが、エボラブル アジアの「旅Pro-BTM」ではそうした費用は一切かからない。しかも当日や前日の予約、あるいは急な変更時にも割安価格で提供できるうえに、比較メディアの機能を活かして常に最安値のチケットを表示する仕組みになっている。

 導入先企業では、年平均10~15%の出張費削減と、出張者個人による手配が可能になるため、それまで手配業務を行なっていた総務部門の負荷も軽減した。また、出張費用の精算は導入先企業への一括請求となり、出張者によるチケット代金の立て替え、仮払いや事後精算などの手間も省かれたのだ。

 「旅Pro-BTM」によるシステム化によって出張が一元管理できるという点も大きい。安価なチケットを入手できるにもかかわらず、個人のポイント(マイレージ)取得を目的に高い券種の航空券を購入するという行為も解消された。無駄な出張がなくなり、出張回数そのものが減少した企業もある。

 導入メリットはコストダウンや業務の軽減にとどまらない。出張手続きの透明性が担保されるため、旅費制度の見直しなど内部統制の強化にも役に立ち、「内部統制を目的に導入する企業もある」(下平)という。

 導入先はさまざまだが、なかでも急な出張がよくある企業での利用が目立っている。日本郵便、三井住友建設、三越伊勢丹ホールディングス、キャメル珈琲、日本プロバスケットボールリーグなど、一部大手企業でも導入実績があるが、そもそも大手にはグループ内に出張手配を専門に担う旅行会社を所有する例が多く、「旅Pro-BTM」導入先の80~90%は中堅企業である。社員数100名以下の企業も少なくない。

 コストダウン、業務軽減、内部統制強化、初期費用とランニングコストがゼロ――こうしたメリットを知れば、国内出張の多い企業や団体が積極的に導入を検討するというのは容易に想像がつく。下平は「BTM事業の市場規模は相当大きい」と今後の期待を込めて語る。事業の立ち上げ当初こそ、プッシュ型営業を実施したが、今では自社メディア経由の問い合わせ、コスト削減コンサルタントなどからの紹介によって導入先を増やしてきている。

 今後、同社では、ホテル、レンタカー、海外航空券など商材を増やす方針を固めており、導入を希望する企業からの引き合いが絶えることはない。

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