サイボウズ株式会社 青野 慶久

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青野 慶久(あおの・よしひさ)

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 事業内容:グループウェアの開発、販売、運用 所在地 :東京都中央区日本橋2-7-1      東京日本橋タワー 27階(東京オフィス) 設 立 :1997年8月 URL :https://cybozu.co.jp/ 1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、97年8月サイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーなども務める。

特集ボトムアップで就労ニーズを把握 生産性向上への一歩を踏み出す

1.グループウェア

政府が働き方改革を提唱する遥か以前から、社員のさまざまな働き方を実現してきたサイボウズは、紛れもなくこの経営課題解決のトップランナーだ。同時にHRテック開発のトップランナーでもある。

サイボウズが開発した中小企業向けグループウェア『サイボウズOffice』は、スケジュール共有や会議室などを押さえる設備予約、掲示板やファイル共有、ワークフローなどの機能を備え、5万社以上に導入されている。

中堅・大手企業向けグループウェア『サイボウズ ガルーン』は、社内の情報共有、情報活用の効率化、組織横断型の情報共有、組織別の権限移譲、日英中の3カ国語対応などの機能をもっている。こちらも4600社以上で導入済みだ。

これらのグループウェアを有効に活用すれば、生産性向上などさまざまな成果が創出されるが、そもそもツール活用の前提とすべきは、経営陣が社員の就労に対する認識を改めることではないのか。

サイボウズ社長の青野慶久は、こう持論を述べる。「社員が100人いれば100通りの働き方がある。一人ひとり働き方が違うことを認めて制度設計に反映させることが大切で、例えば独身の若い社員が夜遅くまで残業したいと望んでいるとしたら、健康を害さない範囲で認めるべきだ。そのためには社員の就労ニーズがボトムアップで吸い上げられることが不可欠で、手間はかかるが、社長が社員全員の要望を把握する必要がある」

ボトムアップは末端社員の〝ガス抜き〞ではない。各部署の業務を可視化できるようになり、部署間の業務調整によって全体最適を図れるという。「全体最適は生産性を向上させ、社員のモチベーションも引き上げる」と青野は指摘する。

実際、『サイボウズ Office』『サイボウズ ガルーン』を導入して生産性向上や残業時間の削減などの成果を出せるかどうかは、ボトムアップの実行にかかっているという。これはサイボウズが自社で実証してきた原理原則でもある。勤務時間や勤務場所は社員一人ひとりが選択可能で、働き方は全社員に向け公開・共有されている。また、1年以内に自分の「できること」、今後「やりたいこと」をアプリに登録して公開する「My キャリ」という制度を運用して、社員のニーズを吸い上げているのだ。『サイボウズ Office』『サイボウズ ガルーン』にはダイバーシティ(多様性)支援という機能もあるが、留意したいのはダイバーシティの捉え方である。社会課題として受け止めるべきなのか、それともダイバーシティの確立が業績向上につながるのか。「いえ、ダイバーシティはつくるものではなく、すでに在るものだ。たとえ若い男性だけで構成された体育会系の会社であっても、ダイバーシティは在る」

青野は、会社は異質者の集合体という現実と向き合うことを強調した。

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