株式会社ミラーロイド 成田 秀基

Guest Profile

成田 秀基(なりた・ひでき)

1981年東京生まれ。5歳でサッカーを始め、小学校5年時にヴェルディJr.ユースに入団、中学卒業時まで在籍。高校時代には都大会準優勝を経験。大阪学院大学に入学し、サッカー部主将としてプレーする。卒業後、防犯設備商社に入社。2009年、D&Dコーポレーション設立に参画。11年8月代表取締役に就任、15年6月会社分割により、新体制による株式会社D&Dコーポレーションを設立。16年3月株式譲渡により100%株式を取得。17年10月に新会社、株式会社ミラーロイドを設立し代表取締役に就任。

特集切り札は"スマホ+鏡"のIoT 新規の顧客を開拓・攻略

1.年々厳しさを増すパチンコホール向け事業

ビジネスモデルという概念には固定化・硬直化が内包され、ひとたび急激な変化に見舞われると、それまでの強固なモデルがもろくも崩れ去るというパターンは少なくない。一時の差別化されたビジネスモデルは、必ずしも将来を約束するものではない。株式会社ミラーロイド社長の成田秀基は、この現実を冷徹に見ている。

「これだけ商品とサービスと情報があふれ返っている時代に、ビジネスモデルという考え方は古いと思う。どんな変化にも対応できる経営の舵取りを心がけている」

同社の創業は2009年。15年に会社分割を行ない、成田が取引先を引き継ぎ、新社を発足させた。

主力事業は防犯カメラや顔認証システム、インカムの輸入販売、内装工事、オリジナル動画作成などで、取引先はパチンコホールを中心にマンション、介護施設、飲食店、物流倉庫など約180カ所に及ぶ。
この数年は、韓国製の機器とシステムの取り扱いによって、日本国内の相場の2分の1から3分の1という販売価格で取引先を増やし、安定的に2億円前後の売上げ実績を残してきている。
だが、これまで同社が主力のビジネス対象としてきた分野の事業環境は年々厳しさを増している。全国のパチンコホール数は減少傾向を辿り、警察庁の発表によると1995年の1万8244店をピークに、15年には1万1310店に減少した。

「パチンコホールに偏重した営業構造である限り、先細りは避けられない」

2.美容サロンを新規開拓し鏡の情報端末を販売

そこで成田はビジネスモデルに拘泥しない方針を固めた。

「どんなビジネスでも〝ビジネス(事業分野)×IT〟で成り立つ時代になった」とシンプルに捉え、現在、美容サロンやフィットネスジムなどを中心に新たなITの導入を仕掛けている。
鏡とスマートフォンを合体させたIoT(モノのインターネット)機器「ミラーロイド」だ。鏡としても利用できる大型のタブレット端末と考えればイメージしやすい。基本操作はモバイル機器から行なうため、鏡面に触れることなく、鏡をモニター代わりに利用することができる。
例えば美容サロンでの使用を考えると、顧客のヘアー履歴を管理し、過去の画像やヘアカタログを鏡に表示してスタイリングの提案をすることが可能。顧客はカット中にyoutubeや映画などの動画コンテンツを見ることもできる。フィットネスジムでは、鏡に映る自分の動作を確認しながら、トレーニングメニューや進行状況を表示できる。美容サロンと同様、トレーニング中にさまざまな動画を閲覧できる。

接客業がミラーロイドを導入すれば、始業時に身だしなみをチェックしながら、就業事項を確認できる。
当初は韓国製品の取り扱いを考えていたが、「品質管理と物流に支障があった」(成田)ため、急遽、自社開発に切り替え、国内の協力工場で製造する体制を整えた。

17年2月、有力美容サロンチェーンなどへの販売を開始した。従来とは販路が異なるが、「経営者の会合で知り合った人たちのルートをベースに新規開拓中だ」(成田)。ある証券会社からは、想定外の反応もあった。ミラーロイドを使って顧客に金融商品を説明しながら、鏡に映る顧客の表情から関心の有りようを察知できるという。

3.「自責の結合体」として2020年IPOを目指す

当面の計画はミラーロイドの販売を軌道に乗せ、2020年にIPOが可能な水準に仕上げること。成田は「自分の目が届く範囲である社員100名以内の体制でIPOしたい」と語る。そのときのために注力しているのが組織体質の確立であり、「自責の結合体」を目指している。この概念に至ったのは、人材教育コンサルタントの禰宜猛(ねぎ・たけし)氏の教えに影響を受けたことが大きいという。
禰宜氏は意識改革やコミュニケーション研修を行なっていて、次のような考えを述べている。

「この世の中は全てにおいて、原理原則が作用している。原理原則とは真理であり、道理であり、不変で普遍の理のことである」「人生においては様々な出来事が起こる。良いと感じることも、悪いと感じることも。しかし、
それも全ては自分自身が『試されて』いるだけである」(禰宜語録)

成田自身、身辺に起こる全てを因果応報と受け止め、取り込み詐欺に遭った時も「何かのサインだと思って、原理原則と自責を見つめ直した」と振り返る。

一方で、経営においても、一流のスポーツ選手が実践しているようなルーティンを重視して毎朝実践している。役員と社員が全員で会社周辺の道路を清掃した上で、企業理念「社員とその家族が幸せであり続ける企業。世界に夢を与える企業になります」を唱和し、その日の業務を皆でイメージしてから業務にとりかかっている。
成田は「組織規模が小さい今のうちに自責の体質をしっかりと固めておきたい」と力を込める。こういう姿勢の会社には、知らず知らずうちに、応援してあげようという力が集まってくるものだ。

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