【スペシャルインタビュー】株式会社シーエー・モバイル 石井 洋之

Guest Profile

石井 洋之(いしい・ひろゆき)

1977年神奈川県生まれ。2002年4月、株式会社サイバーエージェントに入社し広告部門に配属。同年10月、グループ総会で新人賞受賞、翌年ベストプレイヤー賞を受賞。07年、SEO事業に特化した子会社 株式会社CAテクノロジーの創設にともない、代表取締役に就任。設立4年目に年間10億円の売上高を達成。10年12月、サイバーエージェントの取締役(CA8)に当時同社史上最年少で選出される。15年10月、モバイルコンテンツ事業を展開する株式会社シーエー・モバイル代表取締役に就任。

特集【スペシャルインタビュー】モバイルインターネット市場を席巻する 挑戦企業に迫る

1.創業社長の外川穣さんから社長を引き継がれて1年半になります。引き継ぎ当時の石井社長の思いをお聞きで きればと思います。

実は、引継ぎ期間はたった1日だけでした。外川さんは創業社長として15年もシーエー・モバイルを牽引されてきた方ですし、時間はかかるだろうと想定していたのですが、その引き際の鮮やかさには驚かされました。実際、引き継ぎがさほど必要なかったのには理由がありまして、必要な情報は経営陣に共有されていたんですね。だから何も支障はなかった。そういう意味でも常日頃から権限委譲されていたのだろうと、思いました。

2.代表に就任してからどのような改革を進められまし たか。

まず、社員の声を聞くことから始めました。社長就任から約半年で400人の社員や幹部と話すなかで多くの気づきや課題を感じました。まず、自社の利益を追求することに傾倒するあまり、市場から見て自分たちがどの位置にいるのか、客観視する意識があまりなかったんですね。もちろん利益訴求は大事ですが、自社だけでなく、当然、他社の動向やユーザーを含め、市場を知ることは大切です。そこで、マーケットオリエンテッドの意識を持つことの重要性を説きました。

また、市場で1位を獲る、という高い目標を掲げることをためらう風土があった。達成できなかったときのことを考え、低い目標に甘んじることもあれば、既成概念にとらわれてそんな短期間で目標を実現できるわけがないと、そんなの無理だと決め付けてしまう文化があった。狙う目標が低く、足元ばかりを見ていては飛躍的な成長は難しい。志を高く持ち、できると信じて高い目標を掲げること、それを達成するために全力で挑むこと、そのためには何をすべきかを考えていこう、と繰り返し伝えていきました。

一方で、個人の能力は非常に高いのに、それを社内で共有し、互いに能力を高め合うという意識が組織規模を考えてもそれほど浸透していないような印象がありました。個人プレーではいつか限界がくる。自分だけでは見つけられない活路も仲間とともに助け合えば、見出すことができるかもしれない。組織として大きく成長するためには、ともに切磋琢磨する環境が必要だと感じました。そこで、私はもっと社内、社外の人たちと積極的にコミュニケーションを図り、成長の機会を自らつくるよう話しました。

サイバーエージェント時代に多くの事業の立ち上げやその事業責任者のほか、子会社の社長を経験したこともあったので、その経験則をもとに事業改革を進めていきましたね。冒頭でお伝えしたとおり、シーエー・モバイル社長就任から3ヵ月以内に社員ほぼ全員からヒアリングを行ないました。その後、会社全体の強みと課題を認識し、成長する事業とそうでない事業を見極め、成長する事業に正しく経営資源が配分できているかをチェックし、少し厳しいと思える高い目標を設定し、経営資源の配分を行ない、具体的な事業戦略を練りました。

3.石井社長が特に重要視する経営資源はなんでしょうか。

ヒト、モノ、カネという経営資源はすべて重要ですが、特に、インターネットビジネスで重要な経営資源はヒトです。個人の能力を最大限発揮させるためには、モチベーションの向上、個人のスキル、一緒に働くメンバーとの相性が重要だと考えていて、最後の〝相性〞でいうと、その半分を占めるのは、マネージャーとの相性が重要だと私は思っています。

マネージャーに求められるのは知識や経験だけでなく、資質も重要で、われわれの業界は若くしてマネージャーに抜擢されることが多いため、なかには未熟な人がいるのも事実です。組織力を強化するためには、マネージャーの資質とメンバーとの相性が重要だと考えています。そのためには、いろいろな人に会い、新たな気づきを得ることも重要だと考えています。

4.それは社外の人ですか、それとも社内の人ですか。

両方ですね。社内だけでなく社外の人とコミュニケーションを取ることはもちろん重要で、私が営業に出向くときなど国内トップクラスのIT企業の社長の方々ともお会いするので、同行した社員などは特によい刺激になっているようです。

たとえば、刺激をもたらすという意味では、 「ピラニア理論」はご存じでしょうか。水槽に餌とピラニアを入れるとピラニアは餌に喰いつきますが、餌とピラニアの間にガラス板を入れて、餌に喰いつけない状態をつくってから、ガラス板を外すとピラニアはおとなしくなってしまいます。再びピラニアの野生を取り戻させるには、水槽に別のピラニアを入れればよいのです。シーエー・モバイルでは僕自身がピラニアになろうと。新しい刺激が外から加わることで組織は活性化するんですね。もしかしたら藤田さん(サイバーエージェント社長)や役員が僕をシーエー・モバイルの社長に推してくれた狙いの一つに、そうした刺激をもたらす存在になることがあったかもしれません。

5.刺激をもたらすために石井社長が実践した取組みはな んでしょうか。

マネジメント層の意識向上と目標設定の見直しですね。それと、技術力に課題があると感じたので、藤田さんに承認を得て、サイバーエージェントから優秀な技術担当マネージャーを招聘し、エンジニアやクリエイティブの技術力の向上と評価制度の改革を始めました。私自身、ナンバーワン事業をいくつも立ち上げてきた経験があるので、それを活かし、確かな技術基盤を構築する一方で、クライアントへの営業も自ら陣頭指揮を執り現場へ出向くことも少なくありません。組織規模がこれほど大きい企業で代表自ら営業に同行することは珍しいことかもしれないですね。

6.挑戦し続けていくうえでの御社の強みはなんですか。

当社の強みは、モバイルデバイスを中心としたコンテンツの企画開発や関連事業を長年運営してきたのでそのノウハウが豊富にあることと、ビジネスプロデュース力に長けていることです。エンターテイメント領域における、国内トップクラスのアーティストのファンサイト事業と、占いサイト事業は国内ナンバーワンの実績があります。今では、モバイルに限らず、デバイスの垣根を大きく越え、PC もスマートフォンも含めたインターネット全般の事業領域における広告分野でも大きく実績があります。

また、VR(ヴァーチャルリアリティー)やウェアラブルデバイスなど、モバイル環境はますます変化していくと思いますし、それに応じて時代やユーザーを取り巻く環境も大きく変化していくと思います。今後もそうした変化の波を読み、市場を牽引していく会社であるべく挑戦を続けていきます。

7.新卒採用についてもお尋 ねします。重要な経営資源と考えるうえで、シーエー・モ バイルが求める人物像を教え てください。

いくつかありますが、心根の良い人、目標を決めてコツコツと努力し、その結果、成功体験を得ている人、成長意欲の高い人ですね。そして、最も大切だと考えているのは、自分以外の誰かのために頑張るという、〝フォー・ユー〞のマインドを持った人でしょ
うか。キラキラした経歴じゃなくてよいんです。素直で実直に頑張れる人、そうした人たちに来てもらえるとうれしいですね。

TO PAGE TOP