オスカーキャピタル株式会社 金田 大介

Guest Profile

金田 大介(かなだ・だいすけ)

1982年愛知県生まれ。20代で不動産業界に入り、相続や不良債権物件等の買取・再販を主とする不動産投資事業会社にてビジネスの基礎を学ぶ。実績を重ねた後、2015年6月にオスカーキャピタル株式会社を創業、代表取締役に就任。

特集売上規模は追わない、IPOも目指さない 市場に対応できる組織づくりを構築する

1.顧客リピート率 80 %以上 営業 10 名で売上げ 70 億円を達成

2015年6月創業のオスカーキャピタルは、アパート、マンションの一棟収益物件に特化した不動産販売事業をメインに、販売した物件の管理、二棟目以降の資産形成のサポートも行なっている。一都三県の大都市、全国の政令指定都市にある5000万円から5億円クラスの物件を扱い、前期は70棟(1棟1億円平均)を成約した。

顧客は年収1000万円から3000万円のエグゼクティブ層。税理士、弁護士といった士業、医師、外資系金融機関に勤めるサラリーマンなどが中心で、うち8割がリピーター、顧客一人当たり累計3億円から5億円の物件を購入している。新規顧客は既存顧客からの紹介がほとんどだ。

同社は投資用不動産販売会社のひとつであるが、世に多く見られるような販売営業スタッフを数多く抱える会社ではない。社員12名のうち営業は10名だが、販売に携わる営業職は3名に過ぎず電話による営業も一切、行なわない。

「当社の業務は物件仕入がメイン。良い物件を仕入れることができれば、顧客の方から寄ってきていただける。いわゆるプル型営業です」と、代表取締役の金田大介は語る。

実際、同社が扱う物件は見込み客3人にアプローチすれば、そのうち2人からは「必ず手が上がる」ものばかりだという。販売営業にあたるのは、資産運用に関する知識や経験が豊富で、コンサルティングのノウハウをしっかり修得しているスタッフのみ、自分自身で物件を仕入れられる目利きをもったスタッフしか販売営業に携わることができない。顧客対象が一定の金融リテラシーを有している層であり、かつ投資額が数千万円から数億円という、ふだん見慣れない金額になるため、誰でも取り扱える業務ではないからだ。

こうした営業スタイルは、金田が前職時代に自ら学び取ったものだ。金田は2007年、25歳のときに相続物件や不良債権物件などの競売による買取りおよび再販を主とする不動産事業会社で働き始めた。その会社は社員わずか10数名で、売上げ150億円を叩き出すという、一人当たりの生産性が非常に高い会社だった。金田は、現在も師匠と仰ぐその会社の社長の後ろ姿を通して、物件の仕込みから販売に至るプロセスでのノウハウ、そしてビジネスに対する姿勢を学んだ。

「良い物件」というのは、市場価格よりも2〜3割ほど割安に入手することであり売却時において十分に利益が享受できる物件のことだ。良質なネットワークを築き上げ、税理士ルートから相続案件を、弁護士ルートから不良債権の物件情報を入手している。

2.時代 の潮目を読み 次の ステージを目指す働き方

金田が不動産ビジネスを学び始めた2007年は、米国でサブプライムローンブームによる住宅バブルの余韻がまだ残っていた時期であったが、それからほどなくしてリーマンショックが世界中を襲った。日本国内でもそれまで〝イケイケ〞だった不動産業界は一気に冷え込み、上場企業でさえも資金に詰まり、市場から淘汰された。しかし、金田の当時の勤務会社は同じ不動産業界にあっても、そうした厳しい状況をチャンスに変え、生き延びるどころかさらなる成長を遂げていた。こうした時代を身近で体験した金田は時代の変化、市場の変化を感じ取り一歩先に備えることの大切さを学んだ。

オスカーキャピタルでは、主軸事業とは別に中長期先をにらんだプロジェクトを走らせている。それは、現状に甘んじないよう社員に意識付けをさせることでもあり、金田自身の実体験から導かれたものだ。

例えば、アパートローンに対する各金融機関の融資姿勢である。この変動により物件の商品設計が大きく変わる。

「状況は常に変化するものである。変化をチャンスと捉え、当社の顧客へ最良の融資を取り付けられるよう、新規金融機関とのネットワークづくりを意識しながら社員全員が動いている」

また、いま、政府主導の「働き方改革」という名のもとに、残業、土日出勤、長時間労働=「悪」というレッテルが貼られつつある。しかし、金田はそうした働き方に別の意味を考えている。

「他人と実力差をつける働き方を身に付けることが、経済的自由、時間的自由を手に入れ、人間的な成長を実現するための王道だ。そのためには、一度は不自由な状況を体験し、それを乗り越えることが重要である」

時代の潮目を読みとり、変化に対応すべく、次のステージを目指した働き方を通して、内部成長を持続できる組織づくりを進めている。

3.社長が修得したノウハウを OJTで社員に指南する

同社の組織は社員20名体制を構築することだ。そのため、新卒及び中途採用を積極的に進めている。「社員のほとんどは不動産業界未経験者。業界知識がない方が将来の伸び代が大きい」

現在のところ、同社の人材教育はOJTが中心だ。金田が10 年近くかけて修得したノウハウを金田や幹部が直接背中を見せながら学ばせる。

「普通の人の3倍速で行動し学び続けることができれば10倍の成果を成し遂げられる」

金田から社員に向かって「仕事をしろ!」と口に出すようなことは未だかつて一度もないという。採用時に「自分自身の意思により行動できるかどうか」を見極めているからだ。「当社は、売上げや従業員数など企業規模を追うことはしない。IPOも目指さない。一人当たりの生産性を高め、高い報酬を配分し、優秀な人材を確保する。そして、成長し続けられる組織をつくっていきたい」

同社の考え方に共感を抱く学生は多く、超売り手市場と叫ばれるなか、創業から2年あまりというベンチャーが学生たちの間から熱い人気を集めている。

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