アパグループ 元谷外志雄

Guest Profile

元谷外志雄(もとや・としお)

1943年石川県小松市生まれ。27歳で独立、信金開発(アパグループの前身)を設立。注文住宅からスタートし、ホテル・マンション・テナントビルなど総合都市開発事業を展開する国内有数のディベロッパーに成長させた。2011年に正しい世界観、国家観、歴史観の醸成のための啓蒙を行なう「勝兵塾」を発足。これまで延べ1万に近い塾生がいる。

特集海外旅行客からも圧倒的な一番人気 アパ流もてなし力の”新都市型ホテル”

1.稼働率は平日、土日100%外国人宿泊客が2割を占める

 空前のインバウンドブームに沸くホテル業界の中で、とりわけ、活況を呈しているのが、CMなどでもお馴染みのアパホテルだ。

 2015年の外国人宿泊客は、前年に比べて2・2倍に増えた。現在も宿泊客のうち、約2割が外国人。最近では中国や韓国、台湾、タイ、インドネシア、インドなどアジアの宿泊客が、目立つようになったという。

「新宿や渋谷、六本木などの都心部のホテルは、欧米の個人観光のお客さまにとても人気で、約半数が外国の方です。一方、アジアからは、団体観光のお客さまが多く、幕張などの郊外の大型ホテルに、お泊めするケースが多いですね。シングル中心、宿泊料金が高い都心部に比べて、割安の二人部屋を用意できるし、空港やディズニーランドにも近いからです。都心部のホテルは、平日はビジネス、土日は観光のお客さまが宿泊されるので、客室稼働率はこのところ、ずっと100%です」

 こう胸を張るのは、アパグループ代表の元谷外志雄だ。同グループがホテル事業をスタートしたのは約30年前だが、元谷は、「その頃から、グローバルな事業展開を考えていた」と振り返る。実は、アパホテルの“APA”は、JAPANのスペルから、真ん中の三文字を取ったもの。IOC(国際オリンピック委員会)、ANA(全日本空輸)のように、海外では、イニシャルなど英字三文字の略称がよく使われる。

「ホテルもそうしたほうが、海外の方にも親しんでもらいやすいと考えたのです」(元谷)

2.そのときどきの需要に合わせリーズナブルな料金を設定

 アパホテルは、外国人観光客からの支持が高い「Agoda」などのグローバルな旅行サイトと提携している。そうしたサイトでは、日本のホテルの中でアパホテルが圧倒的な人気だという。その秘密は、快適な環境と高い安全性、かつリーズナブルな宿泊料金によって、顧客満足度がきわめて高い点にある。若い頃から世界80ヵ国以上を訪れた元谷が、万国共通で愛されるホテルの法則を導き出した結果なのだ。

 アパホテルでは宿泊料金が日々変わる。宿泊料金を固定しているホテルが多い日本では、きわめて珍しい。しかし、元谷は、「日本は市場経済国家ですから、生鮮食品と同じように、需給バランスで宿泊料金を自由に変えてもいいはずです」と力説する。海外では、例えばオリンピック期間中、開催地のホテルの宿泊料金が10倍に跳ね上がることもあるというが、アパホテルの場合、上限料金を決めておき、各ホテルの支配人の裁量で、予約見込みに応じ1日単位で値下げも含め料金を変更することもある。

 現在、会員数は約960万人で、ホテルとしては日本最大規模だ。「ホテルはリピーターの方を大切にすべき」(同)との考えから、日本のホテルでは業界最大級の11%のキャッシュバックを実施。それが会員獲得の原動力にもなっている。

3.タイム・イズ・ライフ企業エリートのニーズに対応

 また、ビジネスユースの宿泊客にとって利便性は重要だ。ホテルの立地条件は原則、駅から徒歩3分以内。さらに、会員であれば、カードによってチェックインできるので、時間のロスが少ない。客室の冷蔵庫は空にするなど決済を簡略化している。「出張でホテルをよく使うのは、企業のエリート。多忙なエリート・ビジネスマンにとっては、タイム・イズ・ライフです。1分でも無駄にはしたくないはず」(同)という考え方によるものだ。

 ビジネスマンの場合、ホテルの用途はほぼ寝泊りに絞られるという。そこで、ホテルで最大限寛げるように300室以上の大型ホテルには大浴場も設けた。また、多目的のワイドベッド、40型以上のTVを導入。全室Wi-Fi無料、BBC放送も視聴でき、外国人客に好評だ。

 安全安心にも同グループの考えが徹底されている。02年には全室に元谷代表考案の「煙ふせぐーん」(万一、火災事故が発生した場合にも、これを使用すれば煙に巻き込まれずに、非常口まで避難できる)を備え付けた。全館にAEDも設置。現在1000名以上のスタッフが、救命技能認定証を取得している。

 都市ホテルの平均の約3倍という抜群の収益力をバックに、アパホテルは、5万5057室(建築・設計中、FC、パートナーホテルを含む)という日本最大級のホテルチェーンに急成長している。10年からの「SUMMIT5」(頂上戦略)では、東京都心に40のホテルを一気に展開。東京23区には現在、46の直営ホテル(客室約1万1000室・建設中を含む)を擁している。2020年の東京オリンピック開催をにらみ、2400室の超大型ホテルも横浜にオープンする予定(19年)だ。

 アパホテルの快進撃はとどまるところをしらない。

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